2017年7月31日月曜日

週刊文春のスクープ力のすごさ!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 週刊文春編集長の説く仕事術をご紹介します。
 
ねらい:
 仕事術の教科書ですが、おもしろい気楽な読み物です。
 ぜひご一読ください。
 
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7月28日テレビのバラエティ番組で
「ドッキリ」もどきをやっていました。

芸能人に
「週刊文集ですが、
少しお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか」
と声をかけるのです。

4人が対象でしたが、
3人までは「えーーーっ?、何ですか」とビビるのです。
「心当たりありませんか?」と偽記者がカマをかけると、
「ええーっと、と、あれはなんだらかんだらーーー」と
余計なことを口走ったりしたのは斉藤司さんです。

出川哲朗さんは一番ビビってましたが何も出ませんでした。
一人だけは冷静に対応していました。
やましいところが何もないのでしょうね。

人間本格的な悪さをしていなくても、
一つや二つ後ろめたいことがあるのです。
そこをついた企画なのですが、
「週刊文ーー」と聞いただけでビビるところまで、
週刊文春の実績が轟いているのですね。

この週刊文春のスクープのはしりは、
昨年1月のベッキーの不倫でした。
そこからスクープ連発です。

そこでなぜそんなにスクープが出るのか、
新谷学編集長の「編集長の仕事術」を読んでみました。
ほとんど大賛成の内容です。
スゴイ人だということが分かりました。

----------------こういう構成です。-------------------

第1章 情報/人脈 すべてのビジネスは「人」から始まる 
第2章 企画/発想 予定調和はおもしろさの敵である
第3章 依頼/交渉 難攻不落の相手から「YES」を引き出す
第4章 組織/統率 ヒットを生み続けるチームはこう作る
第5章 決断/覚悟 リスクを恐れず壁を突破する
第6章 戦略/本質 「売れない」時代のマーケティング

著者も言っておられるように,
この内容は編集の仕事に限定したものではなく
あらゆるビジネスの基本原理です。

ポジティブを前提にしたビジネスの実践ガイドです。
慎重派には向きません。

私も企画者なので第2章の内容をご紹介しましょう。
すごく切れ味のよい文章で的確な主張が展開されます。

第2章はこういう見出しから始まっています。
この項を転載します。

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みんなが右と言っているときに左を向けるか

本章では、スクープを含め、我々がどのように企画を
生み出しているのか、その発想の原点について述べていきたい。

この仕事は正直に言って、真面目な人、オーソドックスな
感性の人はあまり向いていない。
誰もが考えつくようなことを言っても「それはそうだよね」で終わってしまう。
お金を払ってもらえるようなコンテンツはなかなか作れない。


みんなが「右だ右だ」と言っているときに
「ちょっと待てよ、左はどう?」と言ってみたり、
全く思いもよらないものを提案する。

あるいはみんなと同じ方向だとしても、さらに突き抜ける
パワーを持ったアイデアを出す。
そうしたセンスが求められている。

例えば、ショーンKさんの記事も、みんなが右を向いているときに
左を見ることで生まれた。

彼がフジテレビの「ユアタイム」のキャスターに抜てきされると
聞いたとき、多くの人は「遂にここまできたのか。すごい出世だな」
と思ったことだろう。

「超イケメンで、ハーバードMBAで、ニュースの顔。
天は何物まで与えるんだろう」と。

報道番組のアンカーマンは、社会的地位がものすごく高い。
アメリカでは大統領よりも影響力があったといわれる
ウォルター・クロンカイトやエドワード・R ・マローがいた。

世論を形成していく上で大きな影響力をもつ立場だ。

私も「ショーンKさんはそこまでのぼりつめたんだ」と注目していた。
しかし、ふと思ったのだ。
「ちょっと、できすぎじゃない?」

彼は非常に謎が多くミステリアス。
公表していたプロフィールだけでは、なかなか裏を取りにくい。

どうも人間っぽい肌触りがない。
とても人工的に作り上げられたイメージなのだ。

その一歩先、彼の「生身の人間性」が伝わってこない。
だからこそ知りたい。それが始まりだった。

早速、取材班を組んでショーンさんの経歴を調べ始めた。

取材を始めたのはフジテレビ「ユアタイム」の記者発表があった頃だ。
取材の詳細は後述するが、それから約3週間くらい取材を続け、
あの記事につながった。

「ちょっと待てよ」という違和感がスクープを生み出すきっかけに
なることがある。

取材をスタートした段階では、まさか「ホラッチョ」なんて
あだ名だったとは夢にも思わなかった。

週刊文春の記者は、毎週5本の企画を提出することが義務づけられている。
もちろん生ネタ、独自情報が望ましいが、
既に報じられていることでも企画になることはある。

ただ、新聞やネットに書いてあることをそのまま、
右から左に「こんなことが書いてありました」では企画にはならない。

そうではなくて「こんなことが書いてあったが、
こういう切り口で料理すれば、おもしろくなるのではないか」
というのが企画だ。

「○○が今流行ってます」ではなく
「流行っている現象を誰かに批評してもらう」
もしくは「その流行の背景にはこんな事情がある」など、
独自の切り口で提案すれば企画になる。

例えば「のん(能年玲奈)さんが声優を務めた『この世界の片隅に』が
流行ってます」だけでは記事にならない。

編集者は「どうすれば企画になるのか」を考えるのが仕事だ。
能年さんの特集にするのか、
監督に光を当てるのか、いろいろやり方はある。

私がまず思ったのは、能年さんが語る「呉弁」の魅力だ。
広島弁の中でも、呉弁というのは独特だ。
「言うちょる」「おどりゃ―」のように、広島の中でもローカルで荒っぽい言葉。

そして呉弁といえば、映画「仁義なき戦い」だ。
日本映画史に残る傑作も舞台は呉。
『仁義なき戦い』以来、呉弁が熱い!」というのはどうだろう、
といった話を会議でした。

このようにひとつの事象でも、いろいろなアプローチがあるわけだ。
「うちの読者がいちばんおもしろがってくれるのはどんなアプローチだろう?」
と、デスクと一緒に議論しながら考える。
「『君の名は。』『逃げ恥』が高齢童貞。処女を救う」という企画も、
あるデスクの発案がきっかけで実現した。

贅否両論あったが、なかなか興味深い問題提起になったと思う。

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この項の後ろにはこういう見出しが続きます。

糸口を見つけたら、すぐに一歩を踏みだす
仕事のおもしろさを教えてくれた「冒険家」編集長
「おもしろがる気持ち」にブレーキをかけるな

「ありそうなもの」を避け「見たことのないもの」を作れ
「ベストな選択肢」から逃げるな
私の雑誌作りにマーケティングの文字はない

「どうなるかわからない」からおもしろい
辛い時期こそフルスイングせよ
基準は自分がおもしろいかどうか」

何もない「更地」に「新たなリング」を立てる
売れる企画の条件は「サプライズ」と「クエスチョン」
「文春砲のターゲット」はどう選ぶ?
見出しがすぐに浮かぶ企画がいい企画

そうしてこの章の最後はこうなっています。

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大切なのは「どうなる」ではなく「どうする」

本章では週刊文春の企画や発想について述べてきたが、
その考え方の全ての源にあるのは「どうなるのだろう?」
という不安ではなく「どうするのか」という意志である。

前向きに考えること。そして、攻めの姿勢である。

中学生のとき、司馬遼太郎さんの『燃えよ剣』を読んだ。
その後、何度か読み返しているのだが、強く印象に残っている一節がある。

沖田総司が上方歳三に
「新選組はこの先、どうなるのでしょう」と訊ねる。

上方の答えはこうだ。
「『どうなる』とは漢の思案ではない。
漢は『どうする』ということ以外に思案はないぞ」。

大切なのは「どうなるか」と心配するよりも「どうするか」である。

状況に呑み込まれるのではなく、
自分が主導権を握って状況をコントロールすることだ。

「自ら状況を変える」ということで言えば、忘れられないスクープがある。

90年代は、今とは比べものにならないくらいメディアのあいだに
ヒエラルキーがあった。
NHK、大手新聞、テレビのキー局などが上位グループ。
週刊誌は最下層だ。

ほとんど相手にしてもらえない。
捜査当局なんで門前払いだった。

それが劇的に変わったのが、「NHK紅白歌合戦」の
プロデューサーを務めた人物の横領をスクープした2004年だった。

NHKのチーフプロデューサーが番組制作費を実績のない会社社長に払い、
一部をキックバツクして懐に入れていた問題を
中村竜太郎記者がスクープし、
「NHK紅白プロデューサーが制作費8000万円を横領していた!」
と報じた。そのときの担当デスクが私だった。

NHKは発売の2日前に会見してこの問題を発表。
スクープ潰しの常套手段だが、我々がNHKの内部資料など、
決定的な証拠を持っていたため、新聞やテレビ各社の
社会部記者が「レクチャーしてほしい」と列をなした。

我々が新聞やテレビの記者にレクチャーする!
かつてを思うと、まさにコペルニクス的転回であった。

それ以前にもヒエラルキーが崩れ始める変化を感じていた。

小泉純一郎政権誕生と同時に特集班デスクとして
週刊文春に戻った2001年以降だ。

当時、
田中眞規子氏や鈴木宗男氏らのスキャンダルが国会をにぎわしていた。

週刊文春がスクープを握っているときには、
新聞、テレビなどともずいぶん協力した。

田中眞規子氏の秘書給与疑惑の際は、
文春と新潮が同着になるとわかったため、
発売前にTBSに「明日発売の週刊文春によると」
というかたちで報じてもらったり、共同通信に
「週刊文春の報道でわかった」という記事を書いてもらったりした。

こうした戦略、戦術は今も受け継がれており、
甘利大臣のスクープもまさにその延長線上にある。

情報の世界では、「ネタ」を持っている者だけが主導権を握ることができる。

自分でリングを設定し、自分でルールを作ることができるのだ。

現状を嘆くのではなく、
未来に対して「どうなるのだろう」と心配するのでもなく、
「どうするか」と自ら道を切り開く。


常にそういう姿勢でいたいものである。

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ためになる面白い読み物です。
ご一読をお勧めします。



1 件のコメント:

三重野 さんのコメント...

面白そうですね。
さっそくKindleで購入して読んでみます。