2015年12月24日木曜日

1504「『システム子会社問題に終止符を』ですって!」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 システム子会社はどうなるべきかについて再整理していただきます。

ねらい:
 「やはりそうか」ということで今後の指針にしていただきます。

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その稿は、日経コンピュータ誌の特集記事を紹介したものです。
 http://uenorio.blogspot.jp/2015/04/blog-post_19.html

いくつかの貴重な事例は紹介されていますが、
とても一般解としての「終止符」にはならない、
ということが私の総括でした。

では何が終止符かということに触れてみたいと思います。

そもそも、
「システム子会社」または「情報処理子会社」なるものは
欧米にはない、日本独特のものである
ということは知る人ぞ知る事実です。

なぜ日本固有かというと、
「終身雇用制」と「専門職・プロが少ない労働市場」が生んだ
特殊な組織であるということです。

システム部門を社内の組織としておくには、
企業統治の観点から違和感があり無くしたい、
しかし終身雇用制では解雇はできないので別組織にする、
という判断がシステム子会社を生みました。

この仕事は専門性があるので専門性を強化してもらいたい
というのが大義名分です。

アメリカの経営者なら解雇しているでしょう。
そして必要なときにはその時点で最適の外部パワーを利用するか
外部から人を雇い入れます。

日本では、必要な時に外部から専門家を調達することは至難です。
したがって、人材を抱えておくという面もあります。

そうなると、終止符を打てる最終解はこうなります。

解は二つです。

1)完全に自立して親会社の我がままに振り回されない、
 役員の受け入れもしない事業体にする
 
 我がままの典型は、
 親会社が経営不振の時には「外で稼げ」といい
 親会社が繁忙になると「余計な事をしないで当社の仕事をせよ」
 というのです。
 
 この事例は枚挙にいとまがありません。
 子会社としてはたまったものではありません。
 
 また、
 子会社の経営をどうしたらよいかを真剣に考えない経営者を
 送り込んでくるのです。

 このような会社の社員が志高くなるわけがありません。

 そこで、得意分野を見つけ出して親会社からの離脱を目指します。
 それをどうやって実現するかが問題です。

 成功例は、古くは野村総研殿ですが、
 現時点での早道はSIベンダ殿の傘下に入ることです。

 前掲特集記事では、

  味の素(NRI)、
 キリンホールディング(NTTデータ)、
 東京電力(日立)、
 パナソニック(旧松下電器系、富士通、日本IBM)、
 日本郵船(富士通)、
 
  私の指摘で
  日本鋼管(日本IBM)、
  積水化学(NTTデータ)、
  AJS(TIS)、
  日新製鋼(日本IBM)、
  JSR(旧日本合成ゴム,NEC)

 が登場しています。

残念ながら脱親会社が実現しているのは僅かです。
でも、
一方的に親会社に振り回されることからは解放されています。

しかし、長年の子会社根性・子会社環境で
社員の士気・能力は必ずしも高くありません。
この点をどうやって改善していくかが課題です。


2)システム子会社を親会社のシステム部門に吸収する。

 このパタンは前掲特集記事でも
 LIXIL、JTB、パナソニック(旧松下電工系)
 私の指摘でカシオ
 が挙げられています。
 システム機能は本社にとって重要な機能であり、
 本社の組織とすべきである、という考えです。

どちらの道を選択すべきかは本社の事業特性によります。
情報処理機能が重要な経営機能であるかどうかです。

従来は、製造業では
情報処理は重要な経営機能ではありませんでした。
前掲1)のパタンをみていただくと
すべてが製造業です。

重要な経営機能であるかどうかは、
本社の経営者の判断によります。

金融業や流通業のシステム子会社は、
コア機能は本社に一元化し、
作業あるいは専門的技術部分は市場から調達する
ようにすることが
システム子会社原則に合うと思われます。

金融業をみると、
本社側が重い企業と軽い企業があることが分かります。
それは、無差別な子会社移管をしているか、
考えた子会社移管をしているかの差であると思われます。
それはその時のあるいは今の経営者の判断の結果です。

どちらにしても、
従業員が生き生きと働ける環境が実現できるかどうかが、
成否のカギを握ります。


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