2015年3月2日月曜日

なぜ人間は誤った判断をするのか!「失敗はそこからはじまる」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 人間はいかに客観的・公正な判断ができないものかを
 膨大な実験結果によって知らされます。
 どういうことによってそのバイアスが起きるか
 を知らされます。

ねらい:
 こういうことについて関心を持たれましたら、
 本書でご研究ください。

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この本は、フランチェスカ・ジーノというイタリア出身の
ハーバードビジネススクールの美人経営学準教授が
書かれたものです。















なぜ人間の意思決定の誤りが生じるかを
心理学的な実験によって解明している
極めて実証的な研究の成果発表です。

別項の「人と企業はどこで間違えるのか」の
続編的な位置づけともなります。

人間の意思決定にバイアスのかかる原因を
9つの原則としてまとめ上げている科学的アプローチが
気に入りました。

以下にご紹介します。
――に続く言葉は、バイアスを避けるための対策です。

1.セルフイメージ――自己認識の「歪み」を自覚する

2.エモーション――感情の体温を測る

3.フォーカス――ズームアウトして「視野」を広くとる

4.ビューポイント――相手の「視点」にスイッチする癖をつける

5.リンク――社会的な「つながり」の影響力を把握する

6.ランキング――自分の「評価基準」を問い直す

7.インフォメーション――情報とその「出どころ」を多面的に確認する

8.フレーミング――選択肢の「型」を見破る

9.シチュエーション――状況の力から自分の「基準」を守る

どの項目もそのタイトルから想定がつきます。
代表的ないくつかの内容をご紹介します。

1.セルフイメージ――自己認識の「歪み」を自覚する
 自分の判断にバイアスがかかるのは以下の場合です。
 1)自分がそのことについてよく知っているという過信
 2)自分が優れていると思う心
 3)権力は人を自己中心的にする。
 4)人の意見はタダよりも高いお金を出した方が聞く。
  (高いコンサルが有効な理由)
 
本書がいかに実証的な実験を行ったかの例として
以下をご参照ください。
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力量の過大な認識と自信過剰のせいで私たちが助言を
受けつけなくなることがどれほど多いかにいったん気づけば、
そうしたバイアスからどう身を守ればいいか、
あなたも考えはじめるかもしれない。

ビジネススクールの講座やエグゼクティブ向けのコースの
受講生にその方法を問うと、
たいてい同じような答えが返ってくる。

経験を積み、統率力を身につければ、
意思決定を行うときに
自分と他者の意見を批判的に比較検討しやすくなるだろう
というのだ。

この考えが正しいかどうかを確かめるため、
私は研究仲間のリー・トースト(ミシガン大学教授)と
リック・ラリック(デューク大学教授)とともに実験を行った。

ある寒い冬の日、
カーネギーメロン大学の学部生107人が、
謝礼と引き換えに私たちの実験室にやってきた。

参加者は1人ひとり、
コンピューターが置かれた仕切りの中に入り、
本人たちは無関係だと思っている2つの実験に参加した。

一方は体重を推定する2部編成の実験で、
もう一方は生き生きとした文章を書く技能の実験だ。

体重推定実験のために参加者が取り組んだ課題は単純で、
3ラウンドから成り、各ラウンドで、
人の写真を見てその体重を推定するというものだった。

その推定が写真の人の本当の体重に近ければ近いほど、
そのラウンドでもらえる謝礼が増えた。

この諜題のあと参加者には、
「次の実験に進むが、のちほどもう1度写真を見る機会がある」
と告げた。

生き生きとした文章を書く技能の実験には、
「ハイパワー」条件、「ローパワー」条件、対照条件の3つがあった。

「ハイパワー」条件加者には、他者に権力を揮うことができた状況を、
「ローパワー」条件の参加者には、他社に権力を揮われた状況を、
対照条件の参加者には、前回食料品店に行ったときのことを、
それぞれ思いだすように求めた。


参加者は文章を書く課題を終えると、
体重推定実験の第2部に進み、
第1部で見た写真に写っていたのと同じ人たちの体重を
ふたたび惟定した。

ただし今回は、自分の意思決定プロセスで利用できるように
「推定値」を与えられた。
実験時の指示によるとその推定値は、
以前の実験で助言者役に割り振られ、
推定値の精度に基づいて謝礼を受け取った参加者たちが
見積もった値からランダムに選ばれたものだという。


なお、この推定値(じつは、私たちが決めた)は精度が高く、
写真に写った人の本当の体重プラスマイナス5パーセントの範囲に
収まっていた。

参加者は推定値がどれほど正確かは知らなかったが
「推定値の精度に基づいて謝礼が支払われた」のだから、
かなり正確だと思って間違いなかった。

この推定値を利用すれば、
参加者たちは
実験を終えたときにはより多くのお金を受け取れたはずだ。
だが私たちは、こうした事実は伏せておいた。

あなたがこの実験の参加者だったとしよう。
最初の体重推定課題では、あなたは写真を注意深く眺め、
それから83キロ、79キロ、90キロという具合に推定する。

次の文章課題では、
他者に力を揮った状況について考えて書くように求められる。

そこで、前回プロジェクトチームを率い、
チームのメンバーに必要性や要請、成績に応じて資源を割り振る権限
を握っていたときのことについて書きはじめる。

チームのメンバーが頼りとする資源の使途は
あなたの裁量次第だったので
そのときに抱いた権力があるという感覚をあなたはありありと思い出す。

別の人の助言を目にする機会を得たあと、
あなたは自分の推定値を修正するだろうか?
前に見た写真に対して最初に下した判断を手直しするだろうか?


この実験の結果、以前の参加者の助言に耳を傾ける度合いは、
参加者が文章課題を終えたあとで
自分にどれほど大きな力があると感じているか
にかかっていたことが明らかになった。

「ハイパワー」条件の参加者は、
対照条件や「ローパワー」条件の参加者ほど助言を利用せず、
「ローパワー」条件の参加者は、
対照条件の参加者よりもよく助言を利用した。

参加者は文章課題で権力があるという感覚を得ると、
判断を下すときに66パーセントの割合で助言を無視した。

逆に、権力のなさを感じたときには、
判断を下すときの26パーセントでしか助言を無視しなかった
(対照条件の参加者は両者のあいだで、34パーセントだった)。

この結果からは、
私たちの直感とは裏腹に 権力は役に立つ助言を
無視する傾向を強めるらしいことがわかる。

この実験の文章課題が引き起こした、
「権力があるという感覚」はかすかで一時的なものであった
にもかかわらず、
参加者は楽観と自信過剰の度合いが高まり、
そのせいで他者の助言を利用する気をそがれた。

この実験では、助言の質がそもそも高かったので、
自分に権力があると感じた参加者が
最終的に下した判断の精度は下がり手にする謝礼も減ってしまった。

権力があると感じ、その結果自信過剰になって、
リーダーの地位にある人が適切な助言を無視した可能性のある
最近の事例を見つけるのは難しくない。

2004年以降、一部の経済学者が、
住宅バブルを維持するのは不可能で
暴落が待ち受けている、と警告しはじめた。

1987年から合衆国連邦準備制度理事会議長として
非常に高い評価を受けていたアラン・グリーンスパンは、
そうした警告を退け、
サブプライム住宅ローンなどの危険なローンに対する規制を
強化するよう求める声を無視した。

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8.フレーミング――選択肢の「型」を見破る
 課題に対してどのような枠組み(フレーミング)を与えるかによって、
 人間の頑張り度は異なる。

 例として挙げられたのはコールセンタビジネスの新入社員研修です。
 研修プランが、
 「新人が組織に価値を加える機会」として設定された「組織重視」の場合は、
 「組織が新人の人生に価値を与える機会」として設定された「個人重視」
 の場合の
 7月後の離職率が2.5倍であった。

9.シチュエーション――状況の力から自分の「基準」を守る
 自分に有利な状況に遭遇すると人間は誘惑にかられる。
 暗くなるとばれないと思って悪さをする。
 詐欺をしたり、自分に都合のよい言い訳をしたりする。

 ここでも実験を繰り返しています。

この9原則のすべてが、常識的にはそうだと言われていることですが、
それをすべて実験で証明したということは凄いことです。

勉強になります。
是非本書をお読みください。


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