2015年3月31日火曜日

日本の若者には働く目標がない!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日本の若者が情けないデータを見ていただく。
 日本の国が情けないデータを見ていただく。

ねらい:
 これから出直しで頑張りましょう!!!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
またか、という感じの調査結果ですが、
日経新聞社が
アジア10カ国の主要都市に住む若者合計2千人に聞いたものです。
対象者は20代の大卒男女です。

大卒がエリートか一般人になってしまっているか、や
サンプリングの偏りもあるのかもしれませんが、
平均月収は以下のように日本はトップではないのですよ! 

 シンガポール 36万円
 韓国      25万円
 日本      22万円
 
中国も16万円なのです。
中国の労働力を安く使おうなんでできない相談ですね。

興味があるのは「何のために働くのか」で
以下の図をご覧ください。


















日本は「日々の生活のため」という最も情けない理由でトップなのです。

「豊かになる」という上流指向が少なく
「家族のため」という日本の美徳も最下位に近いです。

「豊かになるため」は中国、韓国、次いでインドネシア、ベトナムです。
分かりますねー
これから豊かになるチャンスのある国です。

「家族のため」は、
家族主義が強いフィリピンとタイがトップです。
家族助け合いの精神は大事です。

国の構成単位の基本である家族を強化するには、
核家族化に反対し、3世代同居を推し進めなければなりません。

というようなことを考えさせてくれる調査結果でした。

「人生二毛作の生き方」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 第2・第3の人生のあり方を考えていただく。
 外山先生の人生哲学を理解していただく。

ねらい:
 「二毛作」目の参考にしていただく。
 やはり先生の本をお読みください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

外山滋比古先生の「50代から始める知的生活術」
のご紹介です。















失礼ながら外山先生が何者であるか、
私は詳しく知りませんでした。

それもそのはず、もともとは英文学者なのに、
その後、日本語の研究もされ「日本語の論理」
という著書を50歳前に出されるほど
日本語にも専門性を発揮されているのです。

それ以外にも専門的発信を多数されておられます。
現在は91歳です。
ビックリする高齢者殿です。

その先生が、ご自分の経験から
人生80年の時代だ、「人生二毛作」を目指しなさい、
というご託宣です。

二期作と二毛作というのは、こうでしたね。
同じ作物を年に2度作るのが二期作
違う作物を年に2度作るのが二毛作

そこでこれをビジネスライフに当てはめるとどうなるのでしょう。

外山先生は、
英文学と国語をやりましたが、
学校の先生として同じだというなら2期作だが、
まったく違う領域をやっているから二毛作とも言える
と仰るのです。

そうか、それならビジネスパーソンは、
会社を変わっても
同じ営業とか経理の仕事だったら二期作ですかね。

でも、
会社を変わるというのは今の日本社会ではたいへんなことだから
二毛作と言えなくもない、ようです。

ということは、
こんな定義論をしていても意味がないようです。
先生のご意見はこうです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
人生の二毛作を志すなら40代から準備を進めておくことです。
これまでの私の人生をふり返ってみて、
起点は40代だったと思います。

一般のサラリーマンでもそれは同じでしょう。
第2の人生が定年後に始まるとして、
超高齢社会になった現在では、
まだ30年も、
場合によっては40年もセカンド・ステージが待っているのです。

その長期戦に備えるためには、
早くから、2度目の作つけの準備をしておかなければなりません。

自分の畑にどの作物が合うのか。
最初は、試行錯誤も必要でしょう。
それを始めるのが40代というわけです。

サラリーマンとしては、定年まであと20年近くあります。
二つ目の作物の種をまき、
じっくり生育状況を見ることができます。
今年がだめなら、来年再挑戦もできます。

ところで育成すべき作物とは何か。

中略

ひとつ言えるのは、
一毛作時代の「得意」には固執しないほうがいいということです。

商売をやっている人なら別ですが、
サラリーマンの場合はもともと、
自分の本来の価値観とピタリとハマったものを
仕事にしているわけではありません。

そのことを、組織のエスカレータに乗っているうちに、
いつのまにか
自分の「得意」と思いこんでしまっていることもあります。
(上野:まさにそうでしょうね)

中略

これまでの経験があるからという理由だけで、
同じことで2回目の作つけをするのは、
おもしろみがありません。
だいいち、古い土俵では緊張感が乏しくなります。

人間、年をとると経験則をあてはめようとします。
数多く集めたて知恵の引き出しを使おうとします。
それでは第2の人生の収穫は色あせます。

わたしの場合は、40代を、教師の2期作目として
お茶ノ水大学で送っていました(上野:教授です)。

しかし、英文学だけを相手にするのはつまらないし、
日本人が外国のことをいくら勉強しても
たかが知れていると思っていました。

英語だけではつまらないなら、日本語がある。
そう思って始めたのが、日本語の仕事です。
ただ、研究者としてはまったくの素人でした。

中略

英文学の勉強が一毛作だったとすれば、
日本語の仕事は二毛作目だったわけです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そのとおりだと思います。
先生の自らのご経験に基づくご意見は説得力があります。
こう続きます。


人生の二毛作を志すなら、隠居生活などは、
たとえどんなに資産があるとしても、考慮の埒外です。

経済的な問題があるにしても、
同じ会社で定年後の再雇用を望むのも、
よくよく考えたほうがいいでしょう。

問題は、どれだけ働きがいのある仕事ができるか
ということです。

給与の大幅ダウンを受け入れて、
閑職で細々と働く、
それではなんの張り合いもありません。

継続した雇用期間も、早晩、終点が近づきます。
そこで第二の人生の目標を考えていたのでは、
いくら寿命が長くなったといっても遅すぎます。

同じ会社に無理して長くしがみつこうとするのは、
賢い選択とは言えません。

となると、目指すは再就職の道をさぐることですが、
これもやはり仕事の中身が問題でしょう。
できることなら、
新たな気概をもって取り組める仕事を選びたいものです。

それまで勤めていた会社に残るよりも、
少しでも
「新しい自分」を見出せる職場であることが理想です。

もっとよいのは、
定年を迎えてからの再就職ではなく、
五十代のなかばで「意思的な決断」をすることです。

先が見える五十代で、
このまま会社に残ってもたかが知れていると
第二の道を選択した人がいたとします。

もう一方は、
定年まで、あるいは定年後も雇用延長で会社に残っていた人。

このふたりを比べると、六十歳以降の十年間、
二十年間はあきらかに違ってくるでしょう。

もちろん、前者のほうが、
活力に満ちた第二の人生になるはずです。

第二の人生を充実させようと思うなら、
資産形成のトレーニングも、
新たな仕事を見つける試行錯誤も
早いほうがいいのはたしかです。

そして、決断してひと苦労するなら、
それも早いほうがいいはずです。

三十代で、将来を見据えた資産形成の第一歩。
四十代で、自分を生かせる「もうひとつの仕事」の発見。

そして、五十代が「もうひと苦労」するための
適当な時期というわけです。

苦労のない人生はありません。
苦労せずして、充実した老後もありえません。

もちろん、これはあくまで理想です。

五十代の転職が大きなリスクをともなうことはたしかです。

しかし、転職しないまでも、
定年後にすぐ二毛作の実行計画をスタートさせられるよう、
五十代からそれに沿った準備行動をとったほうが
いいのではないでしょうか。

「五十にして天命を知る」
この孔子のことばにしたがえば、
五十代のテーマは、
二回目の作つけの種を決めることです。

天の命(めい)とも言うべき、
後半生の自分の生き方を決することです。

サラリーマン人生は、あくまで全人生の前半です。
その終盤にさしかかったところで、
後半戦の戦略はすでに決まっていなければなりません。

そういうひとりひとりの生き方をしやすくするために
中高年の雇用を創出するのは、
人を雇用する企業・組織、そして社会の
大きな課題と言えます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
仰るとおりです。

1月29日付の日経新聞にも、
柳川範之東大大学院教授のいたビュー記事に
  「40歳定年」で次の挑戦、
  スキル・知識を磨き直し
という見出しが躍っていました。

システム企画研修社では、
「45歳から第二のビジネスライフを見つけ出す」
プログラムを開発してご提供を始めています。

45歳までの20年間が第1のビジネス人生で、
それからの20年ないし30年間が第2のビジネス人生です。

第1のビジネス人生で作りあげた
自分の心の奥にある情報や本音から
何が自分に合っているのかを探り出すプログラムです。

その時に見つかる「天職」は、
今と同じ職業かもしれないし、まったく違う職業かもしれません。
ですがどちらにしても、
これからを託す第2の「二毛作目」のビジネス人生が見つかるのです。

ご関心のある方は以下をご参照ください。

 http://www.newspt.co.jp/data/semina/mind-pd.pdf

お問い合わせはこちらへどうぞ。
 mind-pc@newspt.co.jp

先生は、
現在はウォーキングと料理作りを楽しみ、
間に図書館で原稿書きをされるという
非常に充実した生活を送っておられます。

これは三毛作目なのでしょうかね。
人に振り回されずに自らの道を歩いて来られた素晴らしい人生です。


マクドナルドの沈没

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 マクドナルドの経営危機の原因を研究していただきます。
 外食産業の厳しさを再認識していただきます。
 会社がダメになる時の原因を再認識していただきます。

ねらい:
 マクドナルドの今後を見守りましょう。
 マックが好きな方は応援してあげてください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本稿は、法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科の
小川孔輔教授の書かれた「マクドナルド失敗の本質」
のご紹介です。















それに加えて上野の拡張見解も述べさせていただきます。

当書では小川教授の長年の研究成果によって
詳しく具体的なデータに基づく分析がされています。

それによれば、贔屓があるとみられる小川教授にも
マックは「賞味期限切れのビジネスモデル」(本書の副題)
と言われるくらいの大ピンチなのです。

因みに、
私は孫娘の付き合いでしばらくの間、
頻繁にマックに行っていました。
孫の望むおまけの付いた「ハッピーセット」と
100円マックがお目当てでした。

最近はなぜか行かなくなりました。
別に、中国の鶏肉問題が原因ではありません。
考えてみたら、もっと魅力的なお店があるからなのです。
マックで育ったマックファン以外は、それが一般でしょうね。

先ず非常に示唆に富んだグラフを見ていただきます。































両時代とも、顧客満足度CSが落ちてきたところへ
致命的なパンチを受けています。
藤田時代はBSE問題、
原田時代は
賞味期限切れの鶏肉、不衛生な食肉の処理作業です。

もともとCSが落ちていたのは、何だったのでしょう?

そもそもハンバーガーという食べ物は
日本人向きではないのです。

若い世代はパン食に慣れているのかもしれませんが、
パンにハンバーグを挟んだだけの食べ物は、
多くの日本人の繊細な好みには合わないはずです。

それに対して藤田氏は、1970年代に、
米国を説得して銀座に1号店を出したことでも分かるように、
米国崇拝者を狙ったブランドイメージ戦略を推し進めたのです。

それが成功しました。
その後も日本に合った商品を投入しました。
フィレオフィッシュとかチキンナゲットです。
その戦略が成功しマックは流行になったのです。

しかし、新商品投入が途切れたところで、
消費者から飽きられてしまいました。

そこで、原田氏に交代です。
日本化を徹底的に進めて成功した藤田モデルが行き詰ったのに対して、
原田氏は単純に米国モデルに回帰をしたのです。

大ヒットとなった100円のプレミアムローストコーヒーも米国発です。
直営店を減らしてフランチャイズに切り替えていったのも米国流です。
メガマックも米国発です。

ただそれらの商品提供を支える店舗や従業員については
かなりの強化策をとったようです。

米国流の人事政策で従業員の精神的離反現象もあったようです。

大塚家具騒動は久美子社長の圧倒的勝利に終わりました。
ですが、株主総会で株主からの「従業員の心は掴んでいるのか」
という質問に対して、
久美子社長は「グッ」と詰まったようでした。

親子喧嘩している場合ではないですね。
ニトリやIKEAに押されている大塚家具も危ないですね。


私の目からすると、原田氏の成功は
単に目先が変わっただけでのように見えます。

人間は飽きることの好きなぜいたくな動物なのです。
特に食べ物はそうではありませんか。
毎日同じものを食べるのはイヤでしょう?

米国モデルも本国で苦戦中なのです。
ダメな米国流が日本でいけるわけがないでしょう!

日本では外食として、牛丼チェーン、すしチェーン、
ファミリーレストランチェーン、が頑張っています。
うどんやそばのチェーンもあります。

中食も弁当屋チェーンだけでなく
コンビニもおいしいお弁当を提供しています。

今私が孫と行くのは、地元の中華料理屋とすし屋です。
前者では野菜ラーメンとチーズ揚げ、
後者では茶碗蒸しと納豆巻きが孫の好物です。
これもいつまで続くか分かりません。

新鮮味のないマック、
おいしいハンバーガーの好きな人は
元もとモスバーガーに行っていたし、
つなぎとめる、
または引きつける新商品・サービスが途切れたところが
縁の切れ目という点では
今のマックは藤田時代の最後と同じということです。

この段階での再生のチャンスはあるのでしょうか。
「寿司を主力にする」くらいの思い切った商品転換をしない限り
ダメなのではないでしょうか。
米国の主食はパン、日本の主食はご飯なのですからね。

結びとして、専門家小川教授自身の言葉をご紹介します。
経営危機の一般論としてもたいへん参考になります。

-----------------------------------------------

戦略転換8年目の経営危機

藤田氏、原田氏のどちらの時代においても、戦略転換後の8年目に
経営危機に陥ってしまったのはなぜなのだろうか。

 筆者は、両者の失墜の裏側には共通の要因が三つあったと考える。
 ①マーケティングの失敗、
 ②サービスのトライアングルの崩壊、
 ③画期的なイノベーションの不足
の三つである。この順番で、両時代の経営を評価してみる。

マーケティングの失敗(経営の短期志向)

突き詰めて考えると、どちらも短期的なマーケティング施策に
走ってしまったことが、マクドナルドの行く先を
危うくした原因である。

藤田氏は、1995年にディスカウントの進軍ラッパをならし、
2000年ごろには大勝利をもたらした。

世間からも注目を浴び、「デフレの勝者」と称賛されていた。

原田氏は、米国から持ち込んだ新商品
(プレミアムローストコーヒー、メガマックなど)をヒットさせ、
マクドナルドのV字回復により、
メディアにも頻繁に登場するようになった。

両者それぞれ、価格プロモーションに偏重した施策と、
リメイクした商品投入(米国からのアイデア借用)だけでは、
先が見えていたはずである。

どちらの時代にも共通していたのは、価格水準が商品力に
見合わなくなったことである。

しかし、願客に対するサービスも、店舗の清潔度も、
ハンバーガーそのもののおいしさにも、
抜本的な変革は起こらなかった。

結局は、短期的な対応に終始し、
長期的な環境変化に対応するチャンスを逃してしまった。

売上高の成長と短期的な利益を求めて、
小手先のマーケティング施策に注力しすぎていたツケが、
いま回ってきている。


サービスのトライアングルの崩壊

マクドナルドの組織面での本来の強さは、
「サービスのトライアングル」という概念によって説明が
できる(図表7-2)。




マクドナルドのようなサービス業は、企業、顧客、従業員の
努力によって支えられている。

マクドナルドでの食事に顧客が満足し、
従業員が仕事や待遇に喜びを感じ、
企業が利益を生み出すことができて、
マクドナルドのビジネスが健全運営される。
どれが欠けても、トライアングルは崩れてしまう。

その中でも、
マクドナルドにとってとくに重要なのは、
アルバイトを含む従業員の存在である。

というのは、
サービスは、シャンプーやタブレット端末のようなモノとは
根本的に違っているためだ。

カウンター越しにハンバーガーを手渡す瞬間に、
サービスの品質は決定される。

真実の瞬間(3秒間)に、マクドナルドのクルーが登場してくる。

明るい笑顔が、
ハンバーガーをおいしくする大切な要素なのである。

さらに、高収益なサービス業では、
サービスを提供する全体の枠組みとして、
持続的で他社にはまねができない
ビジネスモデルが構築されていることが必要である。

自社の経営理念(QSC+V)について、
従業員の理解が進んでいることも重要である。

急成長してきた20年間で、
日本マクドナルドの経営陣は、
従業員、FCオーナーによって、
マクドナルドのハンバーガービジネスが支えられていることを
失念したのではないのか。

つまるところ、
マクドナルドは現場の人間によって
支えられている「ピープルビジネス」だったはずである。

藤田・原田時代の後期、
強固だったはずのトライアングルがもろくも崩れてしまった。

三角形の最初のほころびは、
従業員と来店顧客との接点で生じている。

藤田時代は、
ディスカウントと急速な店舗拡大戦略によって、
来店客が増加した。

しかし、
あまりにも忙しすぎて、
クルーの表情からは笑顔が消えてしまった。

原田時代には、
売上の低迷を脱しようと、
メニュー表の撤去や「ENJOY!60秒サービス」を実施した。

これが裏目に出て、
クルーの疲弊とモチベーションの低下を招いた
(サーゼス水準の低下)。

手が回らなくなった店内は、
清掃が充分ではなくなり
汚れが目立つようになる(清潔度の低下)。

さらに、
新投入した商品がヒットしなくなる(品質の低下)。

QSCが下降し始めると、
ブランドイメージが徐々に低下していった。

基本のQSCが徹底できなくなると、
来店客のCSは下がり始める。
そこから1~2年後に、業績が急降下することになる。


画期的なイノベーションの不足

より深刻なのは、イノベーションの不足である。
初期の成功から3~4年後には、
その成果を弾みに、
ビジネスの根本的な改革に乗り出すべきだったのである。

たとえばセブンーイレブンは、
創業以来いまでも継続的なイノベーションを起こす
ことに力を注いでいる。

具体的には、
セブン銀行ATMや共同配送、プレミアムPB商品開発などである。
その成果もあって、いまだに成長を続けている。

米国で創業してから約60年間、抜本的な
イノベーションは起こらず、
いまやマクドナルドのFCシステムは、
古びたモデルになっている。

ビジネスモデルの刷新に取り組むべきだった経営陣は、
目先の価格・プロモーション戦略で
苦境を切り抜けようとした。

日本マクドナルドをV字回復させたように見えた原田氏も、
自らが主導して日本発の商品や事業システムのイノベーション
に取り組むことができなかった。

思い起こしてほしいのだが、
2008年に、筆者らが原田氏に依頼した講演のテーマは
「マクドナルドの成長戦略新ブランド開発や新商品開発、
または差別化戦略等について」であった。

「新ブランド開発」と「差別化戦略」という
イノベーションに関連するキーワードが、
ちりばめられていた。

ところが、2009年以降、
新基軸を打ち出すどころか、
日本発の新商品を発売する気配はなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いかがでしょうか。
マクドナルドに再生のチャンスはあるのでしょうか。
小川先生も、
現在の外人CEOではダメそうだ、と悲観的です。

2015年3月30日月曜日

「なぜあの会社は100年も繁盛しているのか」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 100年以上続いている老舗の研究があることを知っていただく。
 日本的経営や経営一般の本質論に触れていただきます。
 老舗の生成・存続・消滅要因を知っていただく。

ねらい:
 一般の企業経営での共通性を考えていただく。
 何か自分も研究してみようかなと考えていただく。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こういうタイトルの本だと、
大きな企業のことかと思うではありませんか!
そう興味を持って開けてみたら違うのです。















副題に「老舗に学ぶ永続経営の極意」とありました。
しにせレベルの企業のことだったのです。
またもタイトルに騙されたと思いました。

では極意とは何だろう?と思いますね。
極意には共通的という語感があります。
「極意はこれだ!」という感じです。

ところが極意は、
「暖簾は自分のものであって自分のものではない」
などいいことを言っていますが、20か条もあるのです。

100年繁盛している老舗は、
20か条のどれか、あるいは複数のどれかが効いている
というのです。
これもタイトルからすると少し期待外れですね。

しかし内容は、
全国の老舗750社を訪問し、
371社のトップに直接取材をしたという
極めて実証的なものです。

20か条が何かに関心のある方は、
ぜひ原本に当たってください。

この20か条以外にも、
以下のように日本に関する優れた分析結果の図や表が
示されています。

興味を引かれた資料やまとめをご紹介します。

先ず1番めは、
トップの出身大学です。
以下の図のように、一般の企業と老舗はほとんど差がありません。
下位の方の2校が入れ替わっているだけです。


図表① 社長の出身大学ランキング

全企業
老舗
1
日本大学
慶応義塾大学
2
慶応義塾大学
日本大学
3
早稲田大学
早稲田大学
4
明治大学
明治大学
5
中央大学
同志社大学
6
法政大学
中央大学
7
同志社大学
法政大学
8
近畿大学
立教大学
9
関西大学
東京農業大学
10
立教大学
関西大学学院

〔全企業:データバンクの登録企業
 老舗:そのうち操業100年言い上の企業〕
「TDB REPORT Vol92「特集 伸びる老舗、変わる老舗」
11頁 帝国データバンク2008年6月

--------------------------------------------------

学生数の多さが効いていますが、
やはり慶応は強いですね。

この表は帝国データバンクの資料に基づいているそうです。

参考までにということで、
年商1000億円以上の大企業だと、
1位東大、4位京大、7位一橋と国立大学が登場する
ことが示されていました。

2番めは、ブランドや暖簾とは何かの整理です。
これは凄いものです。
非常に参考になります。

ブランドの概念
























暖簾の概念























ブランドは、家畜の焼印から始まり家の紋章に発展した経緯を持ち
識別を目的としたものです。

それに対して
「暖簾は同心円状に拡大し、すべての意味を包含する」
ものだそうです。
研究してみませんか。

次は、日本型経営の整理です。

日本型経営のトライアングル


















 日本型理念経営の流れ










































日本型経営の本質は
「公の心」「恥の文化」「和の精神」であることを示して、
その流れを明らかにしています。
中国・韓国の文化・価値観と比較してみてください。

これ以外にも、
経営の本質を突いた図解が多数載っています。
分析力のたいへん優れた方だと感心します。

最後は、老舗の形体(かたち)の整理です。

  
















何らかの要因で起業(尾ひれの部分)があった後、
外的環境要因、内的組織要因への対応をうまくやって成長する、
そうしていま頭があるということを言っておられます。

それではその内外要因とは何であるかを
次の表で示されています。
この表は中身のたいへん濃いものだと思われます。

 
図表10-1 老舗の生成、存続、消滅の共通要因

共通要因
生成
存続
消滅
マクロ要因
政治経済体制を
ビジネスチャンスに
自然・社会の変化を乗り越える
政治経済体制の
変化、自然災害
地域要因
資源の恩恵、
交通インフラの
メリット、
地産地消の風土
地産地消、
地域共生、
社会貢献
外部市場の成長、
外部資本の脅威、
資源の枯渇、
交通・情報インフラの変更
マネジメント
要因
顧客大事、
取引先大事、
イノベーションの
活用
業態転換、
第二創業、リストラ
不動産投資、
多角化、詐欺被害、
不祥事
ヒューマン
要因
母県文化、
修行経験、
先祖の強み、
暖簾分け
婿取り、養子、
女性後継、
労使協調
家系後継難、
企業家精神喪失、
悪い風通し



この「存続」のノウハウが前掲の20か条の極意なのです。

この本の著者は、前川洋一郎さんという方で、
「老舗ジャーナリスト」「老舗学の権威」と称されているようです。
老舗学という言葉は驚きです。

前川さんは、
超大企業の松下電器で経営企画室長も経験された方です。
そういう方が老舗の研究を始められたという点に
興味をひかれますね。

ぜひ、当書をご一読ください。

「答えは必ずある」 マツダの素晴らしい挑戦!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 マツダの達成した偉業を知っていただく。
 偉業達成の成功要因を知っていただく。
 理想的マネジメントの1実例を知っていただく。

ねらい:
 この成功要因の一つでも取り入れましょう。
 ぜひ本書をお読みください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これは素晴らしい成功物語です。
力任せではなく、必死で知恵を出して
世界の並みいる競合に勝ったという日本が世界に誇れる成果です。

成果は、
1.2014年の日本カー・オブ・ザ・イヤーにマツダのデミオが選ばれた。

2.デミオに搭載したマツダの開発したSKYACTIVエンジンは
  世界最高の圧縮比14で
  燃費性能はハイブリッド車並みのリッター30キロを達成した。


こんな画期的なことをどうやってマツダは実現できたのでしょうか。

それを謙虚なスタイルで紹介しているのが、
マツダの常務執行役員で、
この技術開発の先導役を果たした人見光夫さんの書かれた
「答えは必ずある マツダ流「選択と集中」とは!?」です。















先ず、本題に入る前に、人見さんが指摘する
電気自動車やハイブリッドカーの限界を確認しましょう。
常識に対するアンチテーゼです。

電気自動車に対する疑問
 電気自動車は排ガスが出ないというが、
 火力発電で電気を起こす時の排ガスはどうなっている?
 CO2の排出の少ない発電方法が確立しない限り
  環境負荷が小さいとは言えない。
 1充電で200キロしか走れないでいいのか?
 1充電に7-8時間もかかるぞ!
 大半の車が電気自動車になった時には電気が足りなくなる。

ハイブリッド車も基本的にはガソリン車である。
 大きなモーターと大きなバッテリが必要で高コストである。
 利用者は燃費の良さで価格差を回収しようとしたら
  普通はとてもできない。
 電池の交換も高い。
 「ハイブリッド車に乗っているという自己満足以外のなにものでもない」
  (これは上野の言葉です)。

これから本題です。
 
人と同じことをやっていてはダメ、
トヨタに対抗してハイブリッド車を開発してもとても太刀打ちできない、
ガソリンエンジンの改良でハイブリッド車並みの低燃費を実現しよう、
ということで2006年にSKYACTIVの開発が始まりました。

目標は、
ハイブリッド車並みの低燃費のエンジンで
走りがよい車を開発する、
でした。

ハイブリッド車全盛の時代に
マツダは腹をくくった賭けに出たのです。
トップ企業でなできないこと、
3番手以下だからできた一か八かの賭けです。

わけのわからない評論家が
電気自動車の時代にガソリンエンジンの機能強化をしているのか、
などと言ったそうです。

いつだって、評論家の言うことは信用できません。

この開発を始めたときの
先行開発部(商品開発の前の基礎技術を開発する部隊)は
僅か30人でした。
大手には1000人もいるのです。

そこで、立てた基本検討方針は、
「将来の方向を定めて焦点を絞った技術開発をする」
[CAEを駆使した開発を実行可能にする」 
 CAE=Computer Aided Engineering
という「省力化対策」でした。

「選択と集中をして絞り込むしかない」のですが、
具体的な開発方針はどうだったのでしょうか。

以下本書からご紹介します。

-----------------------------------------------------------
では、たった三〇人程度で何ができるかー
そこで考えたのが「選択と集中」である。

もっとも、私たちの選択と集中は、世間で考えられているような
多くの課頴の中から何かを捨ててどれかを選んで集中するというもの
ではなく、仕事の対象となる多くの課題のうちに主要な共通課題と
言えるものを見つけ出し、それに集中するというものである。

一つひとつの課題に対応していたら、人手もお金もまったく足りない。
そこで、これを解決すれば他の課題も連鎖的に解決される、
というような主要課題を探したのである。

ボウリングでたとえるなら、これに当てれば連鎖的に残りのピンも
倒れるヘッドピン(一番ピン)を見つけ、
それに当てることに集中するということである。

「技術開発面でのヘッドピン=進むべき方向を定め、
焦点を絞った技術開発を行なう」というわけである。

そのために究極の理想像を描き、そこに向けてロードマップを描いた。

 例えばエンジンでの燃費改善技術について、
各社で実施されている技術名を列挙すると山のようにあった。

しかしよく考えると、それぞれ名前が違うだけで目指すものは
同じではないかと思い至った。

エンジンの燃費改善とは、結局エネルギー損失をいかに減らすか
ということに他ならない。

そこで、エンジンの持つエネルギー損失には何があるかを考えた。

 まずは、「排気損失」がある。
排気管から出ていく排気ガスは熱を持っているが、
この熱こそがエネルギー損失だ。
そして、高温高圧で燃やすから熱が壁を伝わって逃げていく。


これは「冷却損失」と呼ばれるものだ。
また、金属同士がこすれ合うことで「機械抵抗損失」が生まれる。

そして、空気を吸って押し出す作用で、「ポンプ損失」と
呼んでいる損失。

人間がストローを吸いながら深呼吸することを想像してみてほしい。
エンジンも一所懸命に空気を吸い込む時はしんどい。

空気を吸い込んで、燃えカスを吐き出す時に、
そのしんどさからポンプ損失は起こる。

  この四つの損失を減らすことが、エンジンの効率改善、
燃費改善そのものである。
     
 図表2は、この四つの損失に対応して、私たちがコントロール
できる制御因子を並べたものだ。




















圧縮比、比熱比、燃焼期間など、七つの制御因子が考えられた
エンジンによる効率を改善する技術は、要するに
このどれかをコントロールしようとしているのに過ぎない。

この七つの印紙の詳細については後ほど述べるが、
私たちは、その七つの因子について、三段階のステップで
理想に持っていこうと考えた。

 効用改善技術は100も1000もあると思えば迷うが、
制御できるものは七つしかないとわかれば、
寄り道をしないで済む。

またその壁がいくら高いからといって、逃げることもなくなる。

自分達がいま、どの辺りにいるのかもわかる。

だから、この時期にここまで行けば世界一だよと言えるように
ステップを分け、ロードマップを描くことができた。

このようにゴールを明確にし、そこに至る道筋を見通すことが
できれば他社が何をやっていようと気にすることなく進める。

当時の最大の課題は「世界一の高圧縮エンジン」

 目前に迫った厳しい燃費規制に対し、
技術的にいかに対応するか、圧倒的に少ない人員でいかに
大きな技術的飛躍をするか、他社が行なっている数多くの
技術開発にいかに勝つか。

これらの課題に対するヘッドピンを見つける方法は、
究極の姿を描いてそこに至るロードマップを描くということに
尽きると思う。

ガソリンエンジンの場合は、ロードマップの最初のステップとして
七つの制御因子のうち、高圧縮比化、吸排気行程圧力差低減、
機械抵抗損失の低減を位置づけた。

これらは理想から遠い五つの因子(後述)のうちの三つである。
こうして完成したのが、SKYACTIV-Gと呼ばれるエンジンである。

 このエンジンの一番の特徴は、「世界一の高圧縮エンジン」
を謳っているが、「圧縮比」だ。

 圧縮比を高めればエンジンの効率が高まることは、
エンジン開発に携わる人間であれば誰でも知っている。
しかし、それを実現するためには大きな壁が存在する。

ノッキングという異常燃焼だ。

常識として圧縮比を追い求めてもほぼ限界に近づいているので
無理だと考えて、これを大きく高めようとチャレンジする
ところはどこにもなかった。

しかし制御因子は七つしかない。
しかも理想から遠いのはその中の五つなので、いつまでも後回しに
はできない。だから私たちはチャレンジした。

 では、そのためにどんなに画期的な技術を適用したのか。
どんなに複雑なことをしたのか。
そう問われると、従来知られているものを組み合わせただけで
あると答えるしかない。

最も重要なのは、常識にとらわれない発想そのものなのだ。

---------------------------------------------------------------

要約すると、こういうことでしょう。

何が目的を実現する鍵になる要因なのか、
ヘッドピンを探す。
ヘッドピンが分かったら、
自分たちが制御できる因子を見極める。
その改善に集中的に取り組む、という段取りです。

教科書に書いてあるような目的指向のアプローチです。

これ以外に
本書で人見さんが述べている名言を以下にご紹介します。

 
 「答えは必ずある」と信じる人に、答えは見つかる

 「できない」と言わない。
  
 優秀さを前向きに使う人、後ろ向きに使う人

 組織の課題対策のヘッドピンを探る

 全体像がわかれば、進むべき方向性も
  自分のポジションも見えてくる

 やってみる前に諦めることほど愚かなことはない

 いつだって課題をシンプルに見つめ続ける

 常識が邪魔をすると山の上の景色が見られない

 ロードマップを示して、メンバーに道を教えるのがリーダーの役目

人見さんは東大工学部出で、15年間技術研究所にいた方です。
そういう技術屋さんがこれだけの視野の広い取り組みをされたことは
たいへん失礼な表現ですが、大きな驚異です。

マツダという企業風土の中でなければ実現しなかったことでしょう。

このマツダの成功要因は、
取り組んだリーダ人見さんの素晴らしさ・優秀さですが、
アプローチ法としては以下のように整理できると思います。

1.目的思考
 敵に勝つことのできる優れたエンジンを開発する(ねらい)、
 そのためにハイブリッド車並みの低燃費を実現する(目的)。

 目的思考は、
 システム企画研修の研修の目玉である価値目標思考のコアです。

2.制約理論(TOC理論)
 何がネックかを探ってその解決に注力した。
 「トップピン」探しです。
 それは圧縮比でした。
 
 当書の出版に岸良祐司さんが関わったのは偶然ではないでしょう。

久々に満足のいく著書を読むことができました。




2015年3月28日土曜日

「絶望の裁判所」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日本のヒドイ裁判所・裁判官の問題点を知っていただきます。

ねらい:
 シンデモ裁判所のお世話にならないようにしましょう!!
 関心ある方は、瀬木さんの本を読んでみてください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私は裁判官という人種を信用していません。
1976年に鬼頭史郎裁判官が事件を起こしました。

検事総長名をかたって首相に電話をかけ、
ロッキード事件での田中角栄氏の逮捕に対して
指揮権の発動を促した、ということで騒ぎになりました。

まだ駆け出しの裁判官の時に、
既婚であるにも拘らず女性弁護士に離婚したと偽って
同棲をしました。

他にも奇行が多数ありました。

こんな人に裁判を任せられるものか!
その時、こう思いました。

弁護士も裁判官も司法試験に合格しなければなりません。
国家試験としては最大の難関で、
頭脳の優れた人間が「猛勉」しなければ受からないのです。

頭脳といっても記憶力の方で、判断力はほぼ不問です。
社会を、法律を通じてしか理解していない
「非常識人」が多くなるのです。
だから鬼頭事件が起こるのだと思ったのです。

私の帝人時代の友人O氏が、
「自らの別荘地の管理費の支払い要求が不当である」
という民事訴訟を行った際の裁判官の対応が
極めて不当である、いい加減である、
と糾弾したレポートを送ってくれました。

司法資格は持っていませんが、会社で法務を担当し、
大学法学部や法科大学院で教授をした人です、

私は、
「裁判官も『勤め人』だから、そういう点もあるだろうな」
くらいにしか思っていませんでした。

ところが今回「絶望の裁判所」「ニッポンの裁判」を読んで
裁判所と裁判官のひどさがよくよく分かりました。
O氏がこの本を読んだらよいと推薦してくれたのです。

あらためて、
大学時代の友人清廉潔白・純真無垢の木谷明氏が
よく37年間も裁判官を務められたな、と認識したくらいです。

木谷さんにつきましては
当ブログ「『刑事裁判のいのち』ってなんでしょうか」
(2013年10月17日)
 http://uenorio.blogspot.jp/2013/10/blog-post.html
でご紹介しています。

彼は目下冤罪をなくそうということで大活躍しています。
その活躍ぶりをみると、彼が東京高裁どまりで終わったのは
やはり「絶望」状態のマネジメントが影響しているのか、と
が点がいきました。

本題です

「絶望の裁判所」は瀬木比呂志さんという
1979年から33年間裁判官を務められた方が書かれたものです。
瀬木さんは、文学・音楽・映画の世界の著書もある
「常識人」です。




まさに絶望する、暗澹とした気持になってしまう内容です。
皆様もあまり詳しくお知りになりたくないでしょうから
エッセンスのご紹介にとどめます。

この本のはしがきは、次の一句から始まっています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「この門をくぐる者は、一切の希望を捨てよ」
ーーダンテの「神曲」地獄篇第三歌

以下しばらく、原文のままご紹介します。

裁判所、裁判官という言葉から、
あなたは、どんなイメージを思い浮かべるだろうか?

ごく普通の一般市民であれば、おそらく、
少し冷たいけれども公正、中立、廉直、優秀な裁判官、
杓子定規で融通はきかないにしても、
誠実で、筋は通すし、出世などにはこだわらない人々を考え、

また、そのような裁判官によって行われる裁判についても、同様に、
やや市民感覚とずれるところはあるにしても、
おおむね正しく、信頼できるものであると
考えているのではないだろうか?

しかし、残念ながら、おそらく、日本の裁判所と裁判官の実態は、
そのようなものではない。
前記のような国民、市民の期待に大筋応えられる裁判官は、
今日ではむしろ少数派、マイノリティとなっており、

また、その割合も少しずつ減少しつつあるからだ。
そして、そのような少数派、良識派の裁判官が
裁判所組織の上層部に昇って
イニシアティブを発揮する可能性も皆無に等しい。

中略

(和解ではなく)弁護士とともに苦労して判決をもらってみても、
その内容は木で鼻をくくったようなのっぺりした官僚の作文で
あなたが一番判断してほしかった重要な点については、
形式的でおざなりな記述しか行われていないということも、
よくあるだろう。
(上野コメント、遠慮した表現です)

こうしたことの帰結として、
2000年度に実施された調査によれば、
民事裁判を利用した人々が
訴訟制度に対して満足していると答えた割合はわずかに18.6%にすぎず、
それが利用しやすいと答えた割合も、
わずかに22.4%にすぎないというアンケート結果がでている。

あなたが不幸にも痴漢冤罪に巻き込まれたとしよう。
いったん逮捕されたが最後、
あなたは、弁護士との面会の時間も回数も限られたまま、
延々と身柄を拘束されることになるだろう。

突然あなたを襲った恐怖の運命に、
あなたは、狼狽し、絶望し、ただただ牢獄から出してもらいたいばかりに
時間を選ばない厳しい取り調べから逃れたいばかりに、

また後から裁判で真実を訴えれば
裁判官もきっと分かってくれるはずだと考えて。
「はい、やりました」と言ってしまうかもしれない。

しかし虚偽の自白をしてしまった場合にはもちろん、
あなたが否認を貫いて公判に臨めるほどに
強い人間であったとしても、
あなたが無罪判決を勝ち得る可能性は極めて低い。

(前掲木谷さんの著書では
否認事件の無罪率は2%台だということでした)

刑事系裁判官の判断の秤は、最初から検察官のほうに
大きく傾いていることが多いからである。

裁判の目的とは一体何だろうか?
私は、一言で言えば、
「大きな正義」と「ささやかな正義」の双方を実現する
ことではないかと考える。

しかし、今述べたとおり、
日本の裁判所では、
「ささやかな正義」はしばしば踏みにじられているし、
後に述べるように、
裁判所が、行政や立法等の権力や大企業等の社会的な強者から
国民、市民を守り、基本的人権の擁護と充実、
人々の自由の実現に努めるという「大きな正義」については、
きわめて不十分にしか実現されていない。
(前掲O氏が慨嘆したとおりです)

中略

一つ付け加えれば、本書において、
私は、前記のとおりおそらく過去にあまり例のない
包括的、徹底的な日本の裁判所、裁判官批判を行ったが、
基本的には、
個々の裁判官個人の心にひそむ人間性までも
否定するつもりはない。

また、私は現在でも、
裁判官と呼ぶにふさわしい裁判官は
日本にも一定の割合で存在すると考えている。
(上野コメント 木谷さんは明らかにその一人でしょう)

さらに、
高位の裁判官や
本文で詳しく触れる最高裁判所事務総局系の裁判官の中にも、
人間として評価する人物は存在するとも考えている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
逃げを張っているようですが、
尊敬に足りる人は例外だと述べているのです。

ということで本文では、この主張を裏付ける事実が
以下の目次のもとに延々と述べられています。

第1章 私が裁判官をやめた理由(わけ)
  自由主義者、学者まで排除する組織の構造

第2章 最高裁判事の隠された素顔
  表の顔と裏の顔を巧みに使い分ける権謀術数の策士たち

第3章 「檻」の中の裁判官たち
  精神的「収容所群島」の囚人たち

第4章 誰のため、何のための裁判?
  あなたの権利と自由を守らない日本の裁判所

第5章 心のゆがんだ人々
  裁判官の不祥事とハラスメント、裁判官の精神構造とその病理

第6章 今こそ司法を国民、市民のものに
  司法制度改革の悪用と法曹一元制度実現の必要性

あとがき 不可能を可能とするために

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

なお、「ニッポンの裁判」は裁判の内容の分析・批判書です。
以下の構成です。



第1章 裁判官はいかに判決をくだすのか
  その判断構造の実際

第2章 裁判官か「法」をつくる
  裁判官の価値観によって全く異なりうる判決の内容 
  (上野 現在の国政選挙の不平等訴訟での判決でご覧のとおりです)

第3章 明日はあなたも殺人犯、国賊
  冤罪と国策捜査の恐怖

第4章 裁判をコントロールする最高裁判所事務総局
  統制されていた名誉棄損訴訟、原発訴訟
  (上野 そんなスゴイ組織があるとは知りませんでした)

第5章 統治と支配の手段としての官僚裁判
  これでも「民主主義国家の司法』と呼べるのか?

第6章 和解のテクニックは騙しと脅しのテクニック?
  国際標準から外れた日本の和解とその裏側
  (前掲O氏が経験したとおりです)

第7章 株式会社ジャスティスの悲惨な現状
  (上野 日本の裁判所を会社に見立てた寓話です。
  この章では
  歴代の最高裁長官のワル加減も評価の対象となっています)

第8章 裁判官の孤独と憂鬱

瀬木さんの著書は、構成が明快で、
目次を見ると言いたいことが分かります。
論点も明快です。
素晴らしい力だと思います。

その点からして言っておられることは、
ほぼ信じてよいのではないかと思います。


2015年3月2日月曜日

我が家の河津桜が満開です


【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 春の便りを見ていただきます。

ねらい:
 本格的な春を待っていただきます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これは我が家の河津桜です。

通りを通る人たちが見上げて行っていただいています。
立ち止まる人もいます。
その方たちと会話を交わします。

気がつかない人も多いのです。
上を見ない人です。

この河津桜は、
14年前の2001年3月に河津へ行ったときに
苗木を買ってきたものです。

桜の成長は早いですね。
もう電線の高さを超えています。




河津桜は、2月初めには蕾が膨らみ、1カ月後が満開で、
未だ1週間以上咲いているでしょう。


我が家の庭は狭いので、家の壁にそって枝を延ばしています。
頑張りますね。

なぜ人間は誤った判断をするのか!「失敗はそこからはじまる」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 人間はいかに客観的・公正な判断ができないものかを
 膨大な実験結果によって知らされます。
 どういうことによってそのバイアスが起きるか
 を知らされます。

ねらい:
 こういうことについて関心を持たれましたら、
 本書でご研究ください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この本は、フランチェスカ・ジーノというイタリア出身の
ハーバードビジネススクールの美人経営学準教授が
書かれたものです。















なぜ人間の意思決定の誤りが生じるかを
心理学的な実験によって解明している
極めて実証的な研究の成果発表です。

別項の「人と企業はどこで間違えるのか」の
続編的な位置づけともなります。

人間の意思決定にバイアスのかかる原因を
9つの原則としてまとめ上げている科学的アプローチが
気に入りました。

以下にご紹介します。
――に続く言葉は、バイアスを避けるための対策です。

1.セルフイメージ――自己認識の「歪み」を自覚する

2.エモーション――感情の体温を測る

3.フォーカス――ズームアウトして「視野」を広くとる

4.ビューポイント――相手の「視点」にスイッチする癖をつける

5.リンク――社会的な「つながり」の影響力を把握する

6.ランキング――自分の「評価基準」を問い直す

7.インフォメーション――情報とその「出どころ」を多面的に確認する

8.フレーミング――選択肢の「型」を見破る

9.シチュエーション――状況の力から自分の「基準」を守る

どの項目もそのタイトルから想定がつきます。
代表的ないくつかの内容をご紹介します。

1.セルフイメージ――自己認識の「歪み」を自覚する
 自分の判断にバイアスがかかるのは以下の場合です。
 1)自分がそのことについてよく知っているという過信
 2)自分が優れていると思う心
 3)権力は人を自己中心的にする。
 4)人の意見はタダよりも高いお金を出した方が聞く。
  (高いコンサルが有効な理由)
 
本書がいかに実証的な実験を行ったかの例として
以下をご参照ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
力量の過大な認識と自信過剰のせいで私たちが助言を
受けつけなくなることがどれほど多いかにいったん気づけば、
そうしたバイアスからどう身を守ればいいか、
あなたも考えはじめるかもしれない。

ビジネススクールの講座やエグゼクティブ向けのコースの
受講生にその方法を問うと、
たいてい同じような答えが返ってくる。

経験を積み、統率力を身につければ、
意思決定を行うときに
自分と他者の意見を批判的に比較検討しやすくなるだろう
というのだ。

この考えが正しいかどうかを確かめるため、
私は研究仲間のリー・トースト(ミシガン大学教授)と
リック・ラリック(デューク大学教授)とともに実験を行った。

ある寒い冬の日、
カーネギーメロン大学の学部生107人が、
謝礼と引き換えに私たちの実験室にやってきた。

参加者は1人ひとり、
コンピューターが置かれた仕切りの中に入り、
本人たちは無関係だと思っている2つの実験に参加した。

一方は体重を推定する2部編成の実験で、
もう一方は生き生きとした文章を書く技能の実験だ。

体重推定実験のために参加者が取り組んだ課題は単純で、
3ラウンドから成り、各ラウンドで、
人の写真を見てその体重を推定するというものだった。

その推定が写真の人の本当の体重に近ければ近いほど、
そのラウンドでもらえる謝礼が増えた。

この諜題のあと参加者には、
「次の実験に進むが、のちほどもう1度写真を見る機会がある」
と告げた。

生き生きとした文章を書く技能の実験には、
「ハイパワー」条件、「ローパワー」条件、対照条件の3つがあった。

「ハイパワー」条件加者には、他者に権力を揮うことができた状況を、
「ローパワー」条件の参加者には、他社に権力を揮われた状況を、
対照条件の参加者には、前回食料品店に行ったときのことを、
それぞれ思いだすように求めた。


参加者は文章を書く課題を終えると、
体重推定実験の第2部に進み、
第1部で見た写真に写っていたのと同じ人たちの体重を
ふたたび惟定した。

ただし今回は、自分の意思決定プロセスで利用できるように
「推定値」を与えられた。
実験時の指示によるとその推定値は、
以前の実験で助言者役に割り振られ、
推定値の精度に基づいて謝礼を受け取った参加者たちが
見積もった値からランダムに選ばれたものだという。


なお、この推定値(じつは、私たちが決めた)は精度が高く、
写真に写った人の本当の体重プラスマイナス5パーセントの範囲に
収まっていた。

参加者は推定値がどれほど正確かは知らなかったが
「推定値の精度に基づいて謝礼が支払われた」のだから、
かなり正確だと思って間違いなかった。

この推定値を利用すれば、
参加者たちは
実験を終えたときにはより多くのお金を受け取れたはずだ。
だが私たちは、こうした事実は伏せておいた。

あなたがこの実験の参加者だったとしよう。
最初の体重推定課題では、あなたは写真を注意深く眺め、
それから83キロ、79キロ、90キロという具合に推定する。

次の文章課題では、
他者に力を揮った状況について考えて書くように求められる。

そこで、前回プロジェクトチームを率い、
チームのメンバーに必要性や要請、成績に応じて資源を割り振る権限
を握っていたときのことについて書きはじめる。

チームのメンバーが頼りとする資源の使途は
あなたの裁量次第だったので
そのときに抱いた権力があるという感覚をあなたはありありと思い出す。

別の人の助言を目にする機会を得たあと、
あなたは自分の推定値を修正するだろうか?
前に見た写真に対して最初に下した判断を手直しするだろうか?


この実験の結果、以前の参加者の助言に耳を傾ける度合いは、
参加者が文章課題を終えたあとで
自分にどれほど大きな力があると感じているか
にかかっていたことが明らかになった。

「ハイパワー」条件の参加者は、
対照条件や「ローパワー」条件の参加者ほど助言を利用せず、
「ローパワー」条件の参加者は、
対照条件の参加者よりもよく助言を利用した。

参加者は文章課題で権力があるという感覚を得ると、
判断を下すときに66パーセントの割合で助言を無視した。

逆に、権力のなさを感じたときには、
判断を下すときの26パーセントでしか助言を無視しなかった
(対照条件の参加者は両者のあいだで、34パーセントだった)。

この結果からは、
私たちの直感とは裏腹に 権力は役に立つ助言を
無視する傾向を強めるらしいことがわかる。

この実験の文章課題が引き起こした、
「権力があるという感覚」はかすかで一時的なものであった
にもかかわらず、
参加者は楽観と自信過剰の度合いが高まり、
そのせいで他者の助言を利用する気をそがれた。

この実験では、助言の質がそもそも高かったので、
自分に権力があると感じた参加者が
最終的に下した判断の精度は下がり手にする謝礼も減ってしまった。

権力があると感じ、その結果自信過剰になって、
リーダーの地位にある人が適切な助言を無視した可能性のある
最近の事例を見つけるのは難しくない。

2004年以降、一部の経済学者が、
住宅バブルを維持するのは不可能で
暴落が待ち受けている、と警告しはじめた。

1987年から合衆国連邦準備制度理事会議長として
非常に高い評価を受けていたアラン・グリーンスパンは、
そうした警告を退け、
サブプライム住宅ローンなどの危険なローンに対する規制を
強化するよう求める声を無視した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

8.フレーミング――選択肢の「型」を見破る
 課題に対してどのような枠組み(フレーミング)を与えるかによって、
 人間の頑張り度は異なる。

 例として挙げられたのはコールセンタビジネスの新入社員研修です。
 研修プランが、
 「新人が組織に価値を加える機会」として設定された「組織重視」の場合は、
 「組織が新人の人生に価値を与える機会」として設定された「個人重視」
 の場合の
 7月後の離職率が2.5倍であった。

9.シチュエーション――状況の力から自分の「基準」を守る
 自分に有利な状況に遭遇すると人間は誘惑にかられる。
 暗くなるとばれないと思って悪さをする。
 詐欺をしたり、自分に都合のよい言い訳をしたりする。

 ここでも実験を繰り返しています。

この9原則のすべてが、常識的にはそうだと言われていることですが、
それをすべて実験で証明したということは凄いことです。

勉強になります。
是非本書をお読みください。


「大義なき選挙」の大義は何だったのか!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「大義なき選挙」の大義が何であったのか
  を知っていただきます。
 安倍官邸の意思決定機構を知っていただきます。
 安倍総理の「愛国」の実態を知っていただきます。
 安倍総理復活のタネアカシを知っていただきます。
 
ねらい:
 何かを納得していただきます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

昨年12月の衆議院解散総選挙は、
国民目線では「大義なき戦い」でしたが、
その「大義」が分かりました。

時事通信社解説委員田崎史郎氏の
「安倍官邸の正体」で解明されたのです。
既にご存じだった方も多いのかも知れません。
















それはこういうことです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
安倍政権では、
アベノミクスを打ち出し日本経済の復興を目指していた。
ご承知のようにその3本の矢は金融、財政、成長で、
本命が成長である。

成長がなければ国家財政の均衡はありえない。

消費増税は短期的には税収増になるが、
成長を削いでしまっては元も子もなくなる。

その意味で消費増税は増税を吸収できるだけの勢いが
経済にある時でなければならない。

したがって次の増税を意思決定するには、
4月の8%への増税が経済にどのような影響を与えているかを
把握しなければならない。

経済指標を見ると弱含みで次の増税には慎重にならざるを得ない、
と総理筋では判断していた。

ところが、財務省・財務官僚・その同調議員が、
「慎重」の動きを察してすさまじい「ロビー活動」を行った。

その状況で、増税延期を打ち出そうものなら
「政局になってしまう」
(「政局になる」というのは、
政権の責任問題に発展するという意味だそうです)

解散をすれば、選挙がすべてになり「政局」問題を回避できる。

極秘裏に行われた選挙情勢調査でも、
自民党優位の情報が得られていた。

早期の選挙実施は
準備が整っていない野党に対しても有利である。
自民党および安倍政権にとって
長期安定基盤を得ることができる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

つまり、キレイに整理すると、
アベノミクスの成長戦略を通すために
消費再増税を延期する必要があり、
再増税強硬派の財務官僚対策のための選挙だった、
ということになります。

財務官僚対策だ、などとは言えませんから、
婉曲にアベノミクスの信を求める、などという言い方をしたのです。
これでは分かりません。
「大義なし」になってしまいます。

結果はオーライでした。
今のところ、
日本経済は消費再増税を呑みこむほどの体力はなさそうです。


ところで、同書の本題である「安倍官邸の正体」は
こうなっているようです。

安倍官邸の意思決定機構
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ほぼ毎日、首相官邸で開催される「正副官房長官会議」、
出席者は
安倍晋三総理、菅義偉官房長官、
加藤勝信・世耕弘成・杉田和博官房副長官
今井尚哉主席秘書官
で、この場で重要課題は検討されている。

正副官房長官会議は安倍官邸における
「最高意思決定機関」と言える。

安倍総理は、菅に対しては全幅の信頼を置いている。

安倍は言う。
「志を官房長官ともまったく同じにしていて、
「私は(閣議決定が)うまくいかないと思う時もあったんだけと、
官房長官は終始、強気なんだよ。

私の前ではけっこう『大丈夫ですから』って強気だった。
いやもうちょっと時間を置くかな、
なんて気持ちになる時もあるじゃないですか。
そのとき彼は『この期を逃してはダメです』という感じだった。
終始ね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

安倍総理と菅官房長官の息のあったチームプレーのようですが、
やはり安倍総理のリーダシップが強いようです。

安倍総理はどうして立ち直ったのか。

第1次安倍内閣を放りだした「無責任な』安倍さんが、
どうして返り咲くことができたのでしょうか。

国民の多くは、
2012年の自民党大勝の後の総裁・総理選びで
安倍さんが勝利したときに「意外!」の感じを持ちました。
「なんで、安倍さんが???」と。

第1次安倍内閣の安倍総理が2007年9月に退陣したのは、
相次ぐ閣僚の不祥事を受けて
参院選で歴史的大敗をしたことの引責辞任の要素が強いと
思われていました。

ところが実際は安倍総理の健康障害で、
辞任後直ちに難病「潰瘍性大腸炎」で長期入院しました。

おそらく入院中に、
じっくり第1次安倍政権の経緯を反省したのでしょう。

この反省の成果が、
非常に周到な現在の政権運営につながっている
のだと思われます。

失礼ながら、
安倍総理は非常に頭のよい方なのだと思います。

復帰のために、安倍総理が
地元山口県の選挙区などで並々ならぬ努力を続けれれたことも
本書で紹介されています。

第2次安倍内閣時代(2012年12月~)の安倍総理の言動は、
極めて理に適っています。
読みが的確なのです。

なぜ靖国神社参拝を強行したのか

納得のいく行動の中で、唯一大きな批判を受けている行動が、
2013年12月の靖国神社参拝です。
周囲の反対を押し切って参拝したのです。

田崎さんは、次のように分析しています。

 「今の保守は右派とか左派とかの区別はできにくい、
 靖国参拝賛成派を「強硬保守」と言いたい。
 
 安倍さんを第1次辞任後の雌伏時代に支えてくれたのは、
 強硬保守の人たち(評論家筋では、櫻井よしこ、金美齢ら)だった、
 その人たちへの「借り返し」だった」

安倍総理は「愛国的現実主義者」(田崎さんの言葉)

安倍総理は「強硬保守」ではない、
と田崎さんは判断しています。

その根拠は、強硬保守の人たちは中韓を排斥・避難するが、
安倍総理は「開かれた保守主義」を唱えていて、
一線を画している、というのです。

安倍総理の「開かれた保守主義」を以下のように紹介しています。

2006年10月の衆議院本会議での安倍総理の発言

「私にとって保守とは、いわゆるイデオロギーではなく、
日本および日本人について考える際に、
自分の生まれ育ったこの国に自信を持ち、
今までの日本が紡いできた長い歴史を、
その時代に生きた人たちの視点で見つめ直そうとする
姿勢であると考えています。

一方で、
そうした歴史に根差した保守主義という基盤に立ちながらも、
それは閉鎖的あるいは排他的なものであってはならず、
現実に対しても虚心に目を向けることで、
開かれた保守主義を目指していきたいと思っています。

私の考えるナショナリズムとは、
自分たちが生まれ、育ち、そしてなれ親しんだ自然や祖先、
家族、また地域のコミュニティーに対する帰属意識であります。

そういう帰属意識があるからこそ、誰かに言われなくても、
ごく自然なみずからの感情として、
そうした自然や家族、地域に誇りを持ち、
これらを壊さないように愛情を持って守ろうとする、
そうしたものがナショナリズムであると考えております。

14年1月30日の参院本会議での発言

政治は国民のもの、
自民党の立党宣言はこの言葉から始まります。
私たち自民党には、
右に偏った政治も、左に偏った政治もありません。
あるのは、
ただ現実の国民に寄り添う政治、それだけであります。

(中略)

南西の海では主権への挑発が繰り返されています。
日本の安全保障環境は厳しさを増している、
これが現実であります。

そうした現実の下で、私たち自由民主党は、
国民の生命と財産は断固として守り抜いていく決意であります。
これは右傾化などでは決してありません。
国民を取り巻く現実を直視した責任ある政治にほかなりません。

そのとおりですね。まったく同感です。
安倍総理の国を思う精神はまったくぶれていません。

このような愛国精神は、
人間であれば誰しも持っているものだと思いますが、
今の多くの日本人はそれを見失っていると言われています。

安倍総理が「現実を直視する」
という点では以下の意見開陳があります。

自分の方針を打ち出し、各政党や世論の動向を冷静に見て、
押し通せるなら押し通す。
分厚い壁にぶち当たったら
「ゼロか100という勝負ではなく、
30でも40でも徐々に積み上げていこう。
(正論10年10月号の日下公人によるインタビューでの発言)

現実主義という点では、
テレビなどの画像を通じたイメージづくりを重視しています。

本書で例として挙げられたのは、
14年9月の内閣改造時の記念撮影です。
女性閣僚5人に安倍総理を囲ませています。
女性重視をアピールしているのです。


安倍総理の国を愛する精神はどこから来たのか?

このような安倍総理の信念・
愛国者としてのバックボーンはどこから来ているのでしょうか。

田崎さんの著書での紹介文です。
ニクソンは信用できませんが、いいことを述べています。

 ニクソン元米国大統領の著書「指導者とは」の中で
 チャーチル元英国首相、ドゴール元フランス大統領、
 アデナウアー元西ドイツ首相についてこう述べている。

 「多くの指導者が荒野にさまよう過去を持ち、
 その間に得た洞察力と英知、
 復帰のための闘争が養った力などが、
 のちに威力を発揮したのだった。

安倍総理もまさにそうだったのです。
雌伏5年余の間に賢明な安倍総理が磨いた
「洞察力と英知、復帰のための闘争が養った力」
が今の強い安倍総理を作ったのです。

追記:
私としては、
安倍総理の愛国精神のよって来たる所の全容解明
ができたとは思えません。
今後の課題としたいと思います。

2015年3月1日日曜日

「人と企業はどこで間違えるのか?」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 米国のビジネス界における失敗案件の失敗理由を
 研究しかけて?いただきます。
 上野流の「買う理由」「買わない理由」を研究いただきます。
 消費者の行動はなかなか分からない
            ということを再確認いただきます。
 
ねらい:
 この知見を何かに活かしていただきます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本項は、ジョン・ブルックス著の本件名の書籍の紹介です。
「成功と失敗を分ける10の物語」という副題にありますように
10事例の紹介があります。















日本にはあまりなじみのない案件がほとんどです。
そこで、その案件を知らない人にも興味が湧くように
物語のように状況を紹介して
失敗要因を明らかにしようとしています。

しかし、冒頭のフォード社の大失敗にしても
失敗の本当の原因は不明なのです。

フォード社のエドセル社の失敗

1957年に開発費2億5千万ドルを投入して
「まったく新しいコンセプトの車である」
と前宣伝をして売り出したエドセルが
僅か2年2か月で10万台強しか売れず製造中止となりました。

その間の損失は3億5千万ドルでした。

いくつかの失敗原因があげられています。
 1)フォード創業者の名前をとった「エドセル」は垢抜けしない。
 
 2)差別化・ユニークさを狙ったデザインが
   奇抜というか悪趣味だった。
 
 3)ぜいたくな機能
  (自動変速機、豪華な内装、緊急時の安全機能、など)
  の高価格中型車が受け入れられなかった。
 
  この要因として、
  売り出した直後にソ連のスプートニク1号の打上げが成功し、
  アメリカの技術に対する自信・信奉が崩れた
  ことも挙げられています。
 
 4)この頃から、小型車への嗜好が始まっている。
 
 5)マーケティングが大げさすぎた。
 
 (ディーラ対策は万全だった)

しかし、結局のところ何が主原因であったかは不明です。

ユニークなデザインは、受入と拒否が紙一重です。
その時代背景にもよります。
高機能・高価格を求めるか
標準機能・低価格を求めるかも同様です。

以下のように、
商品化のプロセスがまずかったというのが著者の意見です。

 緻密な市場分析とマーケティング戦略に基づかずに
 勘に頼った時代遅れの手法が忍び込んでいた。
 デザインは雑多な意見の寄せ集めだし、
 商品名の選定も誰かの独断で決められた。

素人の私としては、
やはり外観が大きな要素だったのではないかと思います。

 


















車を見たときに「いいな」と思うかどうかです。
「いいな」と思えば、機能とか値段を確認します。

当時、店頭に来て買わなかった人の調査をしていないので、
なんとも言えません。
なぜその調査をしないのでしょうか?

セールスマンとしては、
なんとか売り込もうと努力はするのでしょうが、
買わない理由は調査する気にならないのでしょう。

一般に買う理由は明らかですが、
買わない理由はあいまいなのです。

私なりに、商品を買う理由・買わない理由を整理してみました。


日用品
生活必需品
(電機製品等)
ぜいたく品
その商品を
買う理由
品質がよい
価格が安い
買う場が便利
機能が優れている
価格が納得いく
満足感が得られる
(気にいる)
価格が納得いく
その商品を
買わない理由
買う理由が他の商品に負けている
買う理由が他の商品に負けている
買う理由が得られない


これによれば、日用品や生活必需品は、
買う理由・買わない理由がはっきりしています。

昔は百貨店、その後はGMS(スーパー)が「買う理由」として
消費者の支持を受けていました。

ところがその後、以下のような各種の専門店が出てきて
GMSも「買わない理由」の仲間に入ってしまいました。

食品スーパー、コンビニ、ミニスーパー、100円ショップ、
ドラッグストア、大型電機店、
ショッピングセンター、アウトレット、安売り店(ディスカウントストア)

ところが、ぜいたく品の買う理由「満足感が得られる」は
内容不明なのです。
おそらく事前の市場調査でもこの点は明らかにならないでしょう。

世の中の動向から察知して仮説を立て取り組むしかないのです。
感(勘)の優れた人の勝ちです。

しかし、開発した「ぜいたく品」が売れないときに、
買わない理由を調査したとして、
それを製品の改良に繋げることはできるのでしょうか。

おそらくそのような軌道修正を行うことができないので、
その製品の改良には役立たず、
次の製品を作る時の参考にするしかないでしょう。

だとすると、誰が「買わない理由」の調査をするのでしょう?
このことが、
買わない理由の調査が行われない理由なのかもしれません。

フォードのエドセルの失敗原因は、
「ぜいたく品」としての狙い目で失敗しただけでなく、
「生活必需品」としての「買う理由」からは完全に外れた、
ということもあったのではないでしょうか。


本書では、この事例の他に、
ゼロックス社が独占的利益を維持し続けるために
どのような努力をしているか、とか
GEの1950年代の談合がなぜ起きたか、
とかの事例が紹介されています。

しかし、平均で30数ページに亘る「人文科学的物語」は、
私の「読む理由」を満足させることができず、
ギブアップいたしました。

ご関心ある方は、原本をお読みください。