2015年2月2日月曜日

「当たり前の経営」と言いますがたいへんな変革の実現報告です!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 SCSK殿の経営革新事例を知っていただく。
 残業を削減しても会社は回り
  高収益が実現できる道があることを知っていただく。
 経営革新にはトップのリーダシップが鍵である
  ことを再認識していただく。
 

ねらい:
 社長さん!!リスクを冒して意思決定していきましょう!

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「当たり前の経営」という本が、
ダイヤモンド社から12月11日に出ました。
副題は「常識を覆したSCSKのマネジメント」で、
SCSK社の最近の変革をレポートした内容です。
















「常識を覆した」ということと「当たり前」の組み合わせに
違和感がありますが、こういうことです。

例えば、「残業をしないで生産性をあげて高収益を実現する」
本来当たり前のようですが、実際にはできていません、
残業をしないで会社が回るわけがない、
と多くの人は考えています。

それが常識です。
しかし本来当たり前のことにチャレンジしたらできた、
というのがSCSK社の事例なのです。

著者は、野村総研OBで明治大学大学院教授をされている
野田稔さんという方です。

野田さんは、
SCS社とCSK社が合併した際に、
両者幹部の融合研修を担当されました。
それ以来顧問的に関わってこられましたので
同社の状況に精通しておられます。

SCSK社は、情報サービス業界の方は当然ご存じですが、
昨年10月に
日経新聞社が主宰している「人を活かす会社」ランキングで
富士フイルムホールディングス等を抑えて堂々1位を獲得し、
広くその存在が知られるところとなりました。

人を活かす会社にするために
同社がとった施策は以下のとおりです。
 オフィス環境の改善 
  1人当たりオフィススペースの倍増
  食堂・診療室・マッサージ室の設置
  休憩室も拡大  
 裁量労働制の導入
 
 残業半減 
  現在1か月平均20時間まできた。
 有給休暇取得率95%
 女性活用の施策 
  女性ライン職(部長・課長)育成プログラムの設定
  キャリアサポート制度
  育児休業からの職場復帰支援プログラムの設定
  復職支援金制度
  有給休暇の時間単位取得制度

などを実施しておられます。

これらは、他の企業で導入済みのものもありますが、
今一歩踏み込んでいるものもあります。

いずれにしてもそれらの制度等を
矢継ぎ早に実施しておられるところがスゴイのです。

それを推進しているのは経営トップである
中井戸信英会長兼CEOです。

会長名で社員家族あてに
禁煙(「奨励金を出します」)や有給休暇の取得について
家族の協力をお願いする手紙を発送するなども行っています。

信念でこうと思うことをどんどん実施しておられるのです。
たとえば、
「残業が多くて疲れていて質の高い仕事ができるわけがない」
の思いが本格的な残業削減促進に繋がっているのです。

普通だとラインマネージャは
「そんなことをしたら仕事が回らない」
などと抵抗しそうなものですが、トップの強い意志となれば
抵抗もできません。

何とかやりくりできるものなのです。
もちろん会議の改善などの対策は取っていますが、
社員1人1人の心がけの方が効くでしょうね。

やはりトップの力は凄いと思います。
会社を変えられるのはトップしかありません。
トップの力以外で会社が変われたという例を私は知りません。

これからのスピードが命の変革の時代には
ますますそうなるでしょう。

優れたトップのイメージは
 稲盛和夫さん、
 日本電産の永守重信社長
 ソフトバンク孫社長
 楽天の三木谷社長
 ユニクロの柳井正社長
とかですが、

人のみが経営資源である情報サービス業界において、
トップのリーダシップで一流会社を作り上げることができる
ことを示された
中井戸会長の貢献は非常に大きいと思います。

残業削減は、社員の健康配慮と
疲れていては質の高い仕事ができるわけがない
という思いから始めておられます。

初めは先を読んでいたのではなく、
収益減を覚悟していたのだそうですが、
結果は増収、増益、増配となりました。

以下の好循環が回ったのです。

 残業しない 
  ↓
 業務の効率化 
  ↓
 ゆとりの発生
  ↓
 先を考えるようになる
  ↓
 夢を描く
  ↓
 ワクワク感が生まれる
  ↓
 元気な職場になる
  ↓
 さらにゆとりが生まれる

そこで社員たちは、
これから先のことを考えるようになっているのだそうです。

以下本書からの転載です。社員の発言です。

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正直、合併以来、厳しい現状が続いています。
残業をなくすために、へとへとになっているところもあります。
そこを頑張るためには、目指すべきところがないと無理です。

それは夢のような世界です。

今、わが社がグローバルと言うと、
『日本企業の海外進出を支援する』というレベルに留まっています。

中井戸さんにしても、珍しく、
海外企業向けの仕事については『慎重に進める』を口にします。

確かに現実的なメッセージですが、
そこを超えるのが
次の世代、さらにその次、その次かもしれないですが、
私たちの使命だと勝手に思っています。

繰り返しますが、海外企業から注文が飛び込くる、
そんな”一流”企業になりたいのです」
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ITはずっと以前から『経営に欠かせないインフラです』
と言われています。

でも、それにしてはそこまで活用されていない。
日本企業のITは、まだまだ泥臭い作業の効率化に寄与する
程度に留まっています。

特に大企業はそうなので、
新しく世界に出ることのできるサービスは
全部、ベンチャー企業に持っていかれています。

そうした産業の位置付け、
産業構造を変えるリーディングカンパニーになりたいですね。

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「僭越ながら、もし自分が経営者であれば、
研究開発の一環として、いくつかのテーマを決めて、
親会社、グループ企業とコラボレートして、
さまざまに社会的な実証実験を仕掛けます。

1万何千人を養うためには、
既存のビジネスモデルは
維持しなければもちろんいけないわけですが、
10年後を見据えた活動を、
水面下では始めるべきだと思っています。

それで一つずつ確実に成果を上げる。
成果が上がれば、少しずつそちらの事業化に取り組み、
シフトさせていく。そんなことをやりたいですね。

働き方改革に関しては、
せっかくこういう取り組みが始まっているので、
業界のリーダーになるために、
この動きを継続して、さらに課題があれば潰していき、
本当に生産性の高いホワイト企業というブランディングを
確立していきたいと思います。

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商社を親会社に持つというのが、
当社の特色の一つだと思うので、
ビジネスを企画し、プロデュースするところから、
一緒に組み立てていくような取り組みを全体として
いくつかやっていきたいと思います。

足元で思うのは、スマチャレもそうなのですが、
時間をコントロールしやすくするためには、
仕事を受ける側ではなく、つくる側になる必要があると
思います。

これもビジネスプロデュースに帰結するのかもしれませんが、
いわばこの業界でも上流に位置することが、
つまりは大切なのだという意識が強くなってきました。

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ほんとうにこういう状況が実現するのならマジックに近いです。
中井戸会長はマジシャンだ!ということになります。

つくづく思いますが、頑張るのは社員ですが、
会社を変えるのはトップである、ということです。

最後に、
SCSK社主催の「働き方改革」セミナー(1月21日開催)で
日本能率コンサルティング田中良憲チーフコンサルタントが
「早くカエル!「オフィスワークの働き方をカエルメカニズム」
と題した講演で提唱されていた5つのメカニズムで、
SCSK殿の活動を整理してみます。

1.明確で強い全社方針
  これ以上はないというくらいの中井戸会長のリーダシップです。

2.実態の見える化
  残業削減・有給休暇取得状況を全社で見えるようにしました。

3.ノウハウ・ルール設計
  有給習得促進のための制度、
  女性活用の各種制度等を作りました。

4.ドライブとなる組織の編成
  人事グループの中に会長直結の推進組織を設けました。
  人事グループ副グループ長人材開発部長の河辺恵理さんも
  ずい分会長の特命事項を担当されたようです。
  河辺さんは同社初の執行役員です(14年4月就任)。

  河辺さんとは、私がSCS殿とのご縁ができた頃からのご縁です。
  積極的な才女だな!という印象でした。
  当然のご出世でしょうね。
  まだまだこれからを期待したいです。

5.チェンジマネジメント(成果の還元) 
  削減された残業代を社員に還元(分配)する仕組みを作りました。
  
  これはなかなかできないことです。
  したくないのではなくて
  公平で客観的な基準が設定できないということで実現しないのです。

  「これでやってみよう!」というトップダウンでなければできません。

SCSK殿にはこれからも、「日本的サービス業」の実現モデルとして、
情報サービス業界の先駆者であり続けていただきたいと思います。

 

2 件のコメント:

Kumagorow さんのコメント...

上野様

貴重なレポートありがとうございます。
ただ、どうして残業を減らせたのか、まだ腑に落ちません。
東レ研究所の佐々木さんは企画課長時代、無駄な仕事を4割廃止して、企画課の残業を大幅削減されました。
SCSKの場合のキーは何でしょうか?
残業しない範囲で仕事を受注するということでしょうか?
その辺、掘り下げて頂けるとありがたいです。

上野 則男 さんのコメント...

kumagorowさん
ご質問ありがとうございます。
残業削減は以下のようにされたようです。
1.業務見直しによる、集約化と負荷の均等化
2.一部業務のアウトソ―シング
3.17時以降の会議の禁止、会議時間の上限設定
4.直行・直帰の奨励
5.電話1分以内、議事録1枚以内、会議1時間以内の1ベスト運動
6.集1回以上の提示前終業をするスーパー早帰りデーの設定
7.会議の時間・人数・資料をそれぞれ半分にする8分の1会議

とありますが、画期的なものはないようです。
こういう活動をすることによって、業務の効率化をしようという意識をみんなが持つことが改善に繋がったのではないでしょうか。