2012年8月27日月曜日

旧来型百貨店の行き詰まりから何を学ぶ?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
    百貨店業界の不振はアウトソーシングにあることを
    確認していただく。
    事業のコア機能は、アウトソーシングしてはいけない
    ことを再確認していただく。
    システム業界のアウトソーシングは正当化されるのかを
    お考えいただく。
    システムの保守はアウトソーシングすべきではない
    という説を知っていただく。

ねらい:
    保守のアウトソーシングについて再検討いただく。

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百貨店業界は、平成18年から7年連続減収です。
百貨店のビジネスモデルは、
売り場スペースを販売業者に提供して使用料や口銭を稼ぐ
アウトソーシングモデルでした。

アウトソーシングは、
自らの事業遂行上の必要作業を外部に任せるのですから、
内部要員は、内部でなければならない必須業務に集中でき、
あるいは、外部の専門的技能を活用できる、
という面では、非常に有効なビジネスモデルです。

しかし、
外部に依存する部分がその事業に取ってコアである場合は、
内部はコアを掌握できない「空洞化」現象が起きてきます。

コアであるかどうかは、その時代によって異なります。
百貨店の場合、店を構えてモノを売ればよかった時代には、
何が売れるかの多少の目利きができれば
その目利きでテナントを選んでいればよかったので、
商品企画あるいはサービス企画はコアではなかったのです。

ところが、時代が変わって、
消費者が望むものを把握することは現場でないとできない
難しい時代になってきました。

そうすると、販売の機能がコアになり、
それを外部に依存していたのではダメになってきたのです。

百貨店業界は、
お客様を引き寄せる魅力をどうすれば持つことができるかと、
数年以上前から商品企画機能の強化に取り組み出しています。

一部の百貨店では、非物販の充実など、
自営化が成功しつつあります。

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アウトソーシングのマイナス面は、
システムの世界にも起きているのです。

システムがコアでない事業では、
どんどん子会社化や別会社へのアウトソーシングを進めました。
システムがコアの事業でもアウトソーシングは行われました。

システム機能がコアでないならそれもよいでしょう。
しかし、信じられない話ですが
10数年前に米国のJPモルガンはIBM社にシステム機能を
全面アウトソーシングしました。
システムコストの1割以上の削減が目的でした。

ところが、ビジネスニーズに機動的に対応できないということで、
次の経営陣はアウトソーシングの2年後くらいに、
キャンセル料を支払ってIBM社から取り返しました。
JPモルガンは金融業ですからね。
コアでないわけがないのです。

現在も多くの企業で、
システム機能を子会社に、子会社からさらに外部企業にと
アウトソーシングが行われています。

システム機能がコアでないビジネスではそれもよいでしょう。
しかし、金融、流通、通信、一部のサービス業では、
システムはコア機能です。

コア機能を外部依存していて
ビジネスがうまくいくわけがありません。
三菱東京UFJ銀行のシステム統合プロジェクトは
当時頭取の畔柳信雄氏が陣頭指揮をして成功させました。

片や、みずほ銀行はCIOが機能せずに、
システム統合も子会社任せにしたために、
ご承知の「システム障害はなぜ2度起きたか」
と書かれる始末を招きました。

これまでのシステム機能は開発が中心でした。
開発業務は大きな波があるために、
作業の外部依存は一面の正当性を持っています。

ところが、今や新規開発業務はほとんどないのです。
経営のあらゆる機能のシステムを
一通り作ってしまったからです。

今は、
作ったシステムを維持補強していく「保守」の時代です。

「保守」には大きな波はありません。
その代り、経営の変化に合わせて
機動的にシステムを成長させていかなければなりません。
これを外部に依存していたのでは間尺に合いません。

保守は内部で対応するのが筋です。
内部の要員・組織は、そのような機敏な動きができるように、
編成されていなければなりません。

この内部の「変身」には時間がかかりますが、
まずは「そういう方向で行く」ということで
入れ物を作る必要があります。

その先例は、カシオ計算機殿にあります。
同社は2002年に情報子会社を実質的に併合して
システム部門としての一体運営を行っています。

そしてほとんどのシステム業務を「内作」しています。
その結果、あれだけの事業規模を支えるシステムを
僅か130人強で運営されているのです。

ほぼ同じ規模の事業会社の情報子会社社長が
「うちの3分の1の人員だ」と舌を巻いておられました。

私は、こう主張しています。

保守業務は、
担当(2名ペアが好ましい)が、
各部門からの要望受付から始まって、
要件決定、プログラム追加・修正、テスト、移行までの
すべての作業を一貫して受け持つべきだ。

そうすると、保守の担当は、
システム屋として必要なあらゆる機能を知ることができますし、
機動的対応も可能になります。

「保守の外部依存はやめて、自社で一貫生産しなさい!!」

ただし、システムがコア機能である企業では、です。

外部の企業は、システムユーザ企業の要員の一員として
お手伝いされればよいのです。
保守業務の委託は請負である必要はありません。

当事者の方は、ご一考いただければと思います。

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