2012年5月7日月曜日

各界知識人が語る2030年の日本

各界知識人が語る2030年の日本
【このテーマの目的・ねらい】
目的
2030年の日本のあるべき姿について考えていただく。
現在の日本が抱える問題について再整理していただく。
ねらい
ご紹介している本を読んでいただく。
できれば、今後の日本のために何か行動していただく。
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「2030年の日本へ 
あらたにす「新聞案内人」の提言」
(あらたにす編)を読んでみました。

「あらたにす」とは何語だろうと思って見ると
「新たにす」という日本語でした。

「あらたにす」というのは、
朝日新聞、日本経済新聞、読売新聞が、
2008年から2012年2月まで、
共同で運営した実験的ニュースサイトです。

競合の3社が連携するというのは
画期的なことだったようです。
それだけ、
インタネット主導の変革に備えることが
重要な経営課題であると認識されたのでしょう。

本書は、その人気コラム「新聞案内人」の執筆陣が
未来の日本に向けて書き下ろした提言集なのです。

まさに多士済々です。
その方々の提言のテーマを表にまとめてみました。




ご本人が項番をつけて
明確にテーマを分けておられる場合は、
この表でも分割して表示しました。
合計26人、33テーマです。

テーマは、
著者がそのように見出しを付けてあるものもありますが、
それは多くありません。
私が適当に要約したものが大半です。

内容は、こうなるべき、こうすべきという提言と
こうなってほしいという願望と、
こうなるのではないか、という予測とがあります。

33テーマの内容を、以下の領域に分けてみました。
・政治 
大きなテーマは政治が出動しなければ動きませんので、
その面からするとみな政治がらみになってしまうのですが、
政治に区分しましたのは、
政治自体のあり方に関するもののみです。

・経済
経済やビジネスを直接テーマにしたものです。

・社会
いわゆる「社会問題」をテーマにしたものです。
社会の仕組みをテーマにしたものも含みます。

・技術
他のテーマでも、
技術の進歩を前提にしたものがありますが、
ここには、技術そのものの方向性を示したものを挙げました。
2件しかありませんでした。
新聞の一般コラムで技術そのものをテーマにすることは多くなく、
「あらたにす」の執筆陣にもそういう方は多くなかった
ということでしょう。

・文化
日本の文化を大事にし、強化しようという主張です。
大事なことだと思いますが、2件しかありませんでした。

・個人(思考)
個人の生活や思考法に対する提言です。
日本の伝統的思考法に対する改善提案や
行き過ぎた文明生活への反省が含まれています。

本当に広範なテーマでして、
2030年に向けて日本はこんなに課題を抱えているのかと
再認識させられました。

提言内容と提言者の関係をみるために、
提言者が「何系」の方かを確認しました。
それが、提言者の右の区分欄です。

社会は社会科学系、人文は人文科学系、
自然は自然科学系を示します。

この判断は、提言者の出身学部によりました。
表示のないものは職務経歴で判断しました。

概ね、テーマと「区分」は対応していますが、
異色の方もおられます。
自然科学系卒業なのに、
政治テーマを論じておられる安井至さん、
経済テーマを論じておられる白石真澄さんなどです。

因みに、社会領域は、
3系の方の「混戦」状態です。
文化と個人領域は、やはり人文系の戦場です。

このようにテーマを整理して気が付いたことがあります。
それは、家庭の問題をどなたも取り上げていないことです。
極めて重要な問題であるのに、です。

家庭のあり方に関する私見は
別項「2世代・3世代同居を考える」に述べました。

26人の方の提言は、
なるほどと思うことばかりでした。

なるほどの代表例は、坂村健さんの以下の一節です。
日本のビジネス上の技術革新(研究開発面でなく)が
遅れをとっているのは以下の理由もある、とのこと。


揺るぎない法が前提の大陸法の日本。
問題が起きた時点で裁判所が判断し、
結果が慣習法になるという英米法の米国。

「やっていいこと」が規定され、
それ以外が「違法」という国と、
「やっていけないこと」が規定され、
それ以外はやってみて問題があれば裁判で決めていく国、
どちらの方がイノベーションに適しているかは明白であろう。

GoogleのGoogleMAPやFacebookの個人情報の取り扱い、
がまさにその例です。
日本では個人情報保護を固く固く考えすぎです。
これは従来からの私の主張です。

心に残ったのは、
西島雄造さんが紹介された以下の一節でした。


それにつけても忘れられないのは、
住所の代わりにホームレスと記して
朝日新聞に短歌を投稿し続けた公田耕一さんのことである。

ホームレス歌人の記事を他人事のやうに読めども涙雫しぬ
7分の至福の時間寒き日はコインシャワーを一身に浴ぶ
説教と引換へに配るパンならば生きる為には説教を聞く
(上野注:仮名遣いを見ると公田さんの教養の高さが分かります)

2008年12月8日の初投稿以来、
翌年も花冷えや酷暑を詠み続けたあと、投稿が途絶えた。
投稿されたさなかも、それが途絶えたあとも、
読者からまるで返歌のような31文字が歌壇に投稿された。


(中略)
公田さんの消息はわからずじまいだが、
生きることが思うに任せぬときでさえ歌を詠み、
歌に心を洗われる希有な国民であることを、
誇りに思うのである。
その尊い言葉が衰え、変質しようとしている。

公田さんはその後どうされたのでしょう。
気がかりです。

それからもう一つ。
26人の中に女性が5人おられますが、
掲載されている顔写真が皆さん美人でした。
「天は二物を与える」のでしょうか。

1 件のコメント:

青野 馨 さんのコメント...

「日本では個人情報保護を固く固く考えすぎです」という
ご貴殿のご意見に賛成。大学の同窓会名簿を見て、愕然としました。結構著名人なのに、引退後は住所と電話番号だけ、その人はどういう人生を送って来たのか、せめて卒業後主に携わった仕事がわかるぐらいの名簿にしたい、と改定の動きが出ている。
最初に作った時は、ちょうど個人情報保護法が施行されたころだった。