2011年10月31日月曜日

日本企業の針路  野中先生の暗黙知は?

野中郁次郎先生と遠藤功教授の書かれた
「日本企業にいま大切なこと」を読みました。

その目次をご紹介しますが、
どの項目も「なるほど、そのとおりだ」というものが多く、
たいへん示唆に富んだ「教科書」です。
 
序章 日本の経営者は「実践知のリーダーである」

第1部       成功している世界企業は「アメリカ型」ではない
第1章       リーマン・ショックと大震災で何が変わったか
     日本企業にはコモングッドの精神がもともと宿っている
     いまこそ「エコノミックアニマル」に立ち戻れ

第2章       横文字思考の“毒”
     コンプライアンスや数字から知恵や勇気は生まれない
     情緒的な国でどこが悪い

第3章 傷ついた日本の「暗黙知」と「現場力」
・ イノベーションは平凡な日常からしか生まれない
  ・ 愚直なまでに「質」を追及する現場を取り戻せ

第2部 海外に売り込める日本の「強み」

   第4章    ムダが多いはずの「総合力」が生きる時代
     「ぶら下がり」社員を海外に送り込め
     「ガラパゴス」こそ日本の「際立ち」の象徴

第5章       世界に注目される共同体経営
     日本企業の価値観にいまになって欧米が近づいてきた
     モノや技術だけではなく「価値観」を売れ

 第6章 優秀な個を結集する「チーム力」
     モノづくりに“身体性”を取り戻せ
     「日本的なもの」を素直に誇れる20代を活用せよ

第3部       スティーブ・ジョブズに学ぶ「日本型」リーダシップ
第7章 意思決定のスピードをいかに上げるか
     社員をその気にさせる「大ボラ」を吹け
     「職場」という単位に回帰せよ

第8章       優秀なミドルをどう育てるか
     リーダは自分の夢や失敗談を語れ
     現場が元気な会社は「ノリ」がいい

第9章       賢慮型リーダの条件
     「ディシジョン」ではなく「ジャッジメント」
     危機に直面したときの行動で企業の品格は決まる

終章 リーダーはつねに現場とともにあれ
  ・ 「中央」と「現場」の鮮烈なコントラスト
     「平時の現場力」の重要性
     「中央」のエゴを押しつけるな
     いまこそ企業は「社会的責任」を果たすべき
     日本にカリスマ的リーダーは要らない

この中で、特に賛成なのは、
第2章       横文字思考の“毒”
     コンプライアンスや数字から知恵や勇気は生まれない
     情緒的な国でどこが悪い
第9章 賢慮型リーダの条件
     「ディシジョン」ではなく「ジャッジメント」
     危機に直面したときの行動で企業の品格は決まる
あたりです。

ここは日本なのだから
「カタカナ語ではなく日本語を使おう」という考えは、
1984年にシステム分析方法論MINDSAをリリースしたとき
からの私の主張です。
残念ながら、「システム」は「脱カタカナ語」ができない
数少ないものの一つでした。

日本は現場重視で現場が強い、
現場の暗黙知は大きな価値がある、
という野中先生の主張には大賛成です。

ですが、現場力だけで日本は勝っていける、
「カリスマ的リーダは要らない」という主張には賛成しかねます。

近代日本が大きな力を発揮した2回は、
ご承知のように明治維新と敗戦後です。

このときはカリスマ的な強いリーダはいませんでした。
それでも多くの国民あるいは国民一人一人の努力で
偉業を成し遂げられたのは、
国の目標がはっきりしていたからです。
いずれもお手本になる欧米が目標でした。
明確な目標が示されれば「現場」は強いのです。

これからはどうでしょうか。
未知の世界へ足を踏み出していくのです。
少子高齢化社会の先頭を切るトップランナです。
先を指し示すリーダが必要です。

たまたま2011年10月の日経新聞の
「私の履歴書」は東レの社長をされた前田勝之助氏です。
氏は、若い時からユニークな発想をする方で、
炭素繊維など
数々の特許を取られるくらいの技術者でありながら
経営も立派にやられたことが
この「履歴書」で分かります。

この方はカリスマ的なリーダです。
労働組合からCEOへの復帰を要請されたくらいですから。

なお、10月31日の「私の履歴書」最終号の見出しには、
「決断ではなく判断 私の信条」という副題がついていました。
前掲の野中先生の「「ディシジョン」ではなく「ジャッジメント」
に符合するものです。
どちらが元祖か分かりませんが、この説には私も全く同感です。


ビルゲイツ、スティーブ・ジョブズ、グーグルのラリー・ペイジ、
Facebookのマーク・ザッカーバーグのような
知的なカリスマ性あるリーダなしで、
企業はこれからのビジネス界で
リーダシップを取っていくことができるのでしょうか。

日本のビジネス界の創業リーダは
楽天の三木谷浩史社長、ワタミの渡邊美樹会長、
ユニクロの柳井正社長ですが、
皆様強烈な個性のカリスマ経営者です。

軽自動車業界で気を吐いている
スズキの鈴木修社長だってカリスマです。

現場力だけでは、
世界の下請け工場に甘んじることになるでしょう。

当書の最後の一言「日本にカリスマ的リーダーは要らない」は
現場を重視するあまりの勇み足ですね。

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