2011年5月21日土曜日

「括弧の意味論」

難しいことを言っている、
そんなことを研究している人がいる、
その目的は何だろう?と思って、
その本を読んでみました。

著者は木村大治京都大学助教授で、
専門は、アフリカ地域研究専攻だそうです。
ですから、専門外の研究書です。

こんなことが書いてありました。
括弧は、一般に括弧として文書作成で使用している
もの以外に、
傍点付け、下線付け、白抜き表示
なども広い意味の括弧である。

括弧には大きく分類すると2種類ある。
統語論的括弧と意味論的括弧である。
前者の例は
  小さな画用紙(はがきぐらいの大きさ)を用意する
  美しき「水車小屋の娘」
  引用を示すもの
    発言の区切り
  数学の括弧
後者の例は、
  「菅側近」と「小沢側近」ゴマすり“バカ”比べ
  「進歩的」と自称する人々

でもなんて難しい言葉を使うのでしょう。
統語論的括弧は、
「文章の構造を示す括弧」
「文章の部分の関係を示す括弧」
「構造表示括弧」

意味論的括弧は
「文章の一部に特別な意味づけをするための括弧」
「特別な意味を表すための括弧」
「意味づけ括弧」
とでも命名すればよいのに、と思いました。

でも研究書ですから、
実証的な調査もしていました。

週刊誌(朝日、文春、新潮)の年代別括弧の出現率は
1960年から漸増して、
今は10%くらいで横ばいのようです。
強調するための括弧であっても多すぎれば
うっとうしいですからね。
この%は、全文字中で括弧がどのくらいを占めるか、
です。10%と言ったら凄いですね。

もう一つの調査は、個別の著書の括弧出現率です。
芥川龍之介「河童」  2.6%
森鴎外「舞姫」    0.7%
夏目漱石「坊っちゃん」0.8%
夏目漱石」「こころ」 0.9%
 会話文の多少が影響しているだろうとのこと。
哲学書は概ね多く最高の例は6.5%でした。

そんな難しいことを知らなくても
文章は理解できる、何がよくなるのか、
と思います。
どうも「良くなる」ご利益はないようでした。
研究としては、
何かの意義が出てくるのでしょう。

おもしろかったのは、
 「――なーんちゃって」やカタカナ表記も、
統語論的括弧なのだそうです。
なるほど、ですね。

「なーんちゃって」は、最後にそれを言うことで
それまでのことを
お茶らけムードの括弧にくるんでしまうのです。

結論から言うと、私が期待する
「括弧の使い方はこうすればよい」
というガイドは得られませんでした。
最後に「使い過ぎはよくありません」
ということが一言だけ書いてありました。

推定するに、出版社側が
「どうすればよいかというガイドを入れてください」
と注文したのではないでしょうか。
「そのつもりで書いているのではない」
と著者が抵抗したでしょうが、
妥協して、最後にこの文言を付け加えたのでしょう。

久々に学術的な図書を読み、
ずいぶん違う世界だな、と思いました。

因みに私は常に、特にこのブログでは、
括弧はなるべく使わないようにしています。

皆さまに、
あまり「意味のない」文章を読んでいただいて、
申し訳ありませんでした。

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