2010年12月4日土曜日

日本の消費者が望むのは「安い」だけか?

 福岡発の、安売りを前面に出す量販店
 (ディスカウントストア、DS)
 「トライアルカンパニー」が快進撃をしているそうです。
 ここ5年程の売上伸び率は14~23%程度で、
 かなりのものです。
 しかし、
 2011年3月期の予想売上高は2600億円ですから、
 小売りのトップ企業に比較すると1桁以上の差があります。

 この企業の基本方針は、
 とにかく安く消費者に提供することです。
 たとえば、すべてPB(自社ブランド)ですが、
  コーラ350ml缶        29円
  ポテトチップス55グラムもの 59円
  2Lペットボトル入りお茶    79円
  カップめん            59円
 といった具合です(日経流通新聞12月1日号による)。
 すごいですね。
 
 このような激安PBを、これまで2000品目作ったそうです。
 なぜ、そんなに安くできるかというと、こうです。

  1 PB商品を「数打てば当たる」方式で開発している。
    ・売れないものには拘らない。
  2 生産は韓国・中国メーカを重視する。
  3 物流センター全国4か所を自前で運営する。
    ・無理の効く機動的な運営ができる。
  4 廃業した同業の店を居抜きで使う。
    ・まともに作ると1店3億円かかるのを節約できる。

 この方法で今後も売上は急拡大するでしょうか。
 そうは思えません。
 なぜなら、以下の理由です。

 1.仮に、日本中の消費者を対象にするとしても
  これらの商品を消費する限界があります。
  ・日本全体の消費支出のうち、この業態のPBに適した
   広い意味の加工食品の比率は約7%で
   金額に換算すると約20兆円です。
  ・この企業はそのシェアを1割とれば上出来でしょうね。

 2.消費者は、購入する加工食品として、
  「安い」だけを求めるのではなく、
  「うまい」「楽しい」の要素も求めています。
  ・この安売りモデルで対象とできる売上は限定されます。
  ・20兆円が分割されるのです。
 
  現に、12月3日の日経流通新聞には、
  「圧倒的な品ぞろえ」「臨場感あふれる対面販売」
  「産地直送の徹底」で成長する関西の食品スーパーが
  紹介されていましたし、
  節約疲れをした消費者が「ましなもの」を買い始めている、
  という記事も紙上を賑わせています。

 3.居抜きの店舗は今後はそんなに見つからないでしょう。

 そもそも、このような安売りが通用する世界は
 「ニッチマーケット」(すきまビジネス)です。
 現在、大手の小売業が実現できていない分野を
 専門的に掘り下げて実現しているのです。

 この企業はお手本にしている
 ウォルマートの安売りモデルは、
 西友系で実現しようとしましたが、
 日本では長らく成功しませんでした。

 アメリカでは貧民の比率・実数が日本よりかなり多く、
 ウォルマートはその人たちの支持を受けて発展したのです。
 日本での窮乏者は、「今のところ」それほど多くありません。

 ウォルマートも、
 日本では、そのままのビジネスモデルでは成功しない
 と気づき、
 モデルチェンジをして最近は軌道に乗りつつあるようです。
 アメリカでも、
 貧民市場は飽和したので別の市場をも獲得するために
 単なる安売り路線を軌道修正しています。

 その辺の事情は、
 この企業の経営者も織り込み済みで
 中国進出を計画しているようです。
 やはり大した経営者ですね。
 
 とにかく、「他人がやらないことを工夫してやる」
 のはたいへん偉いことです。
 日本の発展のために、
 どんどん、そのような経営者が出てきてほしいですね。

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